タンパク質のモジュール構造 : 生物進化の物理
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概要
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生物は35億年の進化の産物である.生命活動の担い手,タンパク質はアミノ酸が,数十から数千,一定の順序でつながった高分子である.タンパク質もまた,進化の歴史を背おって存在する.タンパク質の構成要素として,モジュールと名づけられたコンパクトな構造単位を導入すると,そのいろいろな組合せによって,タンパク質の構造や機能の進化が説明できることが分かってきた.モジュールは10〜40個ほどのアミノ酸残基がつながった断片である.モジュールの組合せを実現するための工夫は生物の遺伝子の構造そのものに備わっているらしい.1993年度ノーベル医学・生理学賞は,遺伝子の分断構造の発見に対してR. RobertsとP. Sharpに授与された.分断構造を持つ遺伝子では,タンパク質に翻訳される遺伝情報がDNAの鎖に連続して記されているのではなく,翻訳される部分(エキソン)とされない部分(イントロン)が交互にならんでいる.このエキソンこそモジュールに対応する.タンパク質の構造単位という物理的概念が,生物の情報単位エキソンに対応している事実は,イントロンの存在理由を明らかにしたばかりでなく,物理学と生物進化の研究とを急速に近づけている.
- 社団法人日本物理学会の論文
- 1994-05-05
著者
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