イネの出穂開花期における耐冷性検定方法
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概要
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イネ品種フジミノリを人工光環境調節装置内で水掛法により養成し,生育の整った個体を供試する方法を用いた.出稿始めから日射量と気温を標準日射恒温,標準日射変温,弱日射恒温,弱日射変温条件に制御し,気温を6段階に変えて,出穂開花期冷害の発生に強く関係する気象要因を解析し,耐冷性検定に必要な制御条件を明らかにしようとした.出穂開花期冷害の発生に強く関係する気象要因は,出穂から開花盛期の日射量と平均気温であり,この期間の日射最が低下すると出穂開花期における品種の冷害発生温度は高くなった.またこの期間の平均気温が低下し,弱日射恒温条件であると品種の開花率と完全米比率は,標準日射恒温,標準日射変温及び弱日射変温条件により著しく低下した.イネの出穂開花期における耐冷」性の検定は,播種から環境を一定に制御し,個体の生育と生理状態を揃え,検定環境を弱日射恒温とし,17.5℃から1℃間隔で6段階の気温条件を設定し,出穂日から20日間処理を行い,出穂開花期冷害が発生しない温度限界(稔実下限温度)を求め,稔笑'下限温度により品種の耐冷性を判定する方法を開発した.この方法により,日本品種では播種より100日以内で稔実下限温度を正確に求めることができた.本検定法により求めた日本の新旧7品種の稔実下限温度は,17.5℃から23.5℃≦と6℃以上の差異が認められた.稔実下限温度の低い品種は,出穂開花期の寡照冷温による不稔の発生が少ないことから,出穂開花期の耐冷性が強い品種と判定できる.
- 日本育種学会の論文
- 1989-09-01
著者
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