Petunia hybrida と P.parodii との体細胞雑種形成による再分化能の回復
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概要
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再分化能を消失した培養細胞(P.hybrida)由来のプロトプラストと,小さなコロニー以上には生育できない葉肉細胞プロトプラスト(P.payodii)とをポリエチレングリコールを用いて融合させた。融合したプロトプラストは両親のプロトプラストと比較して旺盛な生育を示し,さらに形成されたコロニーを再分化培地に移植したところ苗条が再分化した。一方,両親のプロトプラストはともに苗条を再分化することが不可能であった。 蕾色,花器および葉の形態,パーオキシダーゼアイソザイムパターンを調査した結果,再分化した植物体は体細胞雑種であることが確認された。このようにともに再分化できたい組合せの場合でも何らかの形での相補性の発現により,体細胞雑種植物体を得ることが可能である。 本実験で使用された両種(P.hybrida,P.payodii)ではともに染色体数は14である。しかし,懸濁培養されたP.hybridaの培蓬細胞中に24本の染色体を有する細胞が認められた。hybridaの葉肉細胞プロトプラストは本実験で使用した培養条件で容易に再分化することから,P.hybridaの培養細胞プロトプラストが再分化能を消失した一要因として,培養細胞における染色体数の増加が考えられる。一方,得られた体細胞雑種カルス中に44本の染色体を有する細胞が多数認められた。この原因として,培養細胞中に24本以上の染色体を有する細胞が存在していたことおよび3細胞以上のプロトプラストの融合が誘発されたことたどが考えられる。 体細胞雑種植物において,葯数,花粉粒,柱頭および葉の形にさまざまな異常が認められた。さらに,体細胞雑種植物の蕾は開花直前まで発育するが開花することなく枯死する。これらの形態および発育異常の原因として,体細胞雑種植物が非常に多くの染色体を有することあるいは遺伝子の量的効果,両ゲノムの割合だとが考えられるが,今後さらに細胞学的に検討する必要がある。
- 日本育種学会の論文
- 1983-06-01
著者
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