低温処理によるイネの葯および花粉の異常とその品種間差異
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概要
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イネの障害型冷害における繭および花粉異常の品種間差異を定量的に検討した。供試品種は日本型2品種(レイメイ;耐冷性強,全南風;耐冷性弱)および印度型1品種(Te-tep;耐冷性弱)である。低温処理は減数分裂期に4日間行った。(1)3品種とも裂開約数が減少し,それに伴い稔実歩合も低下した。とくに全南風およびTe-tepでその傾向カミ顕著であった。(2)締の移態異常として,発育不良蒲およびわん曲蒲が認められた。これらの異常繭の発生は全南風で最も多く,大締胞と小蒲胞との発育程度の異なる蒲が多数認められた。(3)1頴花当りの正常紡数は低温により減少し,全南風でその傾向が顕著であった。(4)蒲の形態異常の程度が増すに伴い,花粉稔性の低下が認められた。花粉稔性の低下はTe-tepで最も顕著であった。(5)発育不良菊胞,扁平胞およびタベート肥大胞の発生頻度と耐冷性との間に一定の関係が認められた。(6)不裂開紡では,裂開腔の未形成および形成不良が観察され,形態異常の繭では,大菊胞のみの裂開が観察された。以上の結果から,耐冷性の強弱とこれらの綿および花粉の異常との間に一致した品種間差異が明らかとなった。また,蒲の発育程度と花粉稔性との関係が明らかにされるとともに,蒲の不裂開における蒲組織の異常の意義が示唆された。
- 日本育種学会の論文
- 1978-03-01
著者
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