〓麦品種における穂型と粒形に関する育種学的研究 : 第1報 穂型を異にする〓麦品種の幼穂発育の差異
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概要
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1.芒穂型を異にする裸麦及び同一芒穂型に属する熟期の異なる品種を用いて幼穂形成期,幼穂分化過程,穂の部位別発育を主列と測列別に調査し,小穂段数の変化,穂軸節間長等の変化をも観察した。2.幼穂発育に伴うMm_1とDm_1との特徴は3月20日ごろから現われ,成熟期においてその差異は顕著となつた。Mm_1に属する品種間における差異も認められた。3.幼穂形成期は秋播性程度の高い佐賀〓1号及び奈良早生が,秋播性程度の低い赤神力及び2号熊島より11日乃至18日遅く,その後の幼穂分化過程も穎花分化後期ころまでは遅延した。しかし幼穂形成期から穎花分化後期までの期間には大差はなかつた。4.穎花分化後期より出穂期までの期間は,佐賀〓1号及び奈良早生が著しく短かく,赤神力及び2号熊島よりも20日間ほど早まり,仲長速度の大きいことを示し出穂を早めた。又結実期間も佐賀〓1号及び奈良早生が赤神力及び2号熊島より,いくらか短縮された。5.主列における穂幅は,3月20日ころまでは各品種共穂の下部位の穂幅が中央部位より大きいか,等しかつたが,3月20日以後はこの関係は逆となり,中央部位の穂幅が大となつた。上部位の穂幅は,各品種,各育成時期を通じて下部位中央部位より狭くこの傾向は3月20日頃まで顕著であつた。6.測列における穂幅は,概ね各品種各育成時期を通じて,上部位は最も狭く,下部位の穂幅が中央部位より大であつたが,この傾向は3月20日頃まで顕著で,特に赤神力及び2号熊島によくあらわされた。一般的に側列は主列に比べ下部位の穂幅に対して上部位中央部位の穂幅は狭く示された。この傾向は早生品種殊に奈良早生において顕著であり、早生品種の幼穂の急激な伸長による小穂段数の減少と,登熟期間短縮の影響が大きいように思われた。7.幼穂長の変異は3月20日ころをさかいとして,前期は晩生品種が,後期は早生品種の伸長が大きかつた。8.小穂段数は幼穂穎花分化IX及至X期には40段内外観察されたが,成熟期には早生品種で17乃至18段,晩生品種で22乃至23段内外に減少し,早生品種の減少程度が著しいことを認めた。これは上部位,下部位小穂の退化によるものと思われる。9.穂軸節間長は穂長及び小穂段数の変異に伴なつて増加するが,成熟期の品種間差異は,奈良早生>佐賀〓1号>赤神力>2号熊島の順序となつた。これは奈良早生では長穂と小穂段数の減少により,2号熊島では小穂段数の多いことと短穂によるものと思われる。10.草丈,稈長は幼穂の伸長とほぼ並行的に推移した。11.茎数の増加は幼穂発育程度のVII乃至X期(2月10日)ころまで著るしかつたが,早生は無効分葉が多く見られた。12.大麦の品種改良においては,芒穂型の差異と同様に同一芒穂型に属する品種についても、穂長と共に穂幅殊に側列面の穂幅及び小穂段数の変異を,品種の秋播性程度及び出穂早晩性との関連において注目する必要がある。
- 日本育種学会の論文
- 1960-06-20
著者
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