矮性トウモロコシ未熟雄穂からの器官形成,体細胞胚形成および植物体再生
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概要
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トウモロコシの矮性遺伝子D8を用いた細胞培養系の育種学的利用の可能性を調べるため,低濃度のオーキシンとKinetinを含む培地を用い未熟雄穂からのカルス細胞の誘導と植物体再生を試みた。矮性ヘテロ型(D 8/+)と準同質遺伝子系統`オクズル'および`在来'の高性ホモ型(+/+)とのBC_2世代の外植片を用い,成熟度(未熟雄穂長)による培養反応の差を調べた。MS培地を基本にし,誘導培地では2,4-D1 ppmのみ添加し、増殖培地では2,4-D1 ppmとKinetin 0.1 ppmを添加すると,緊密で球状の黄白色の不透明なカルスが得られ,体細胞胚を数多く形成した。再分化は通常Kinetin 0.1 ppmのみ添加した分化培地で可能であり,不定芽に対する発根はKinetin 1ppmとNAA O.1 ppmの添加によって促進できた。グリーンスポット(G-spot)数が最も多かったのはクラスD(未熟雄穂長2.O〜3.Ocm)からのカルスであったが,体細胞胚形成や植物体再生が最も良かったのはクラスB(1.1〜1.5cm)とC(1.6〜2.Ocm)を用いた時であり,3ヵ月間の培養で再生植物体が得られた。矮性ヘテロ型(D 8/+)カルスは幼苗期の植物体と同様に,外生ジベレリン(GA_3)には反応しなかった。再生植物体24個体の草丈、雄穂長,葉幅,雄穂分枝数および雌穂数を系統と外植片のクラス別に調査した結果,いずれの再生植物体も罎性ヘテロ型(D 8/+)の形態的特徴を良く示した。草丈,雄穂長および葉幅の3形質を用い主成分分析を行ったところ,再生植物を系統やスライス部ごとに区別することができた。未熟雄穂を用いたトウモロコシの細胞培養系では,外植片として用いた雄穂の発芽ステージやそのスライス部の差異が再生植物の形態形質に影響を及ぼすことがあることも示唆された。これらの再生植物体の花序は屋外型人工気象装置(28℃,自然日長)で正常に抽出・開花し,結実した。以上,トウモロコシの矮性ヘテロ型(D 8/+)の未熟雄穂から培養細胞を得て,植物体を再生させることが可能であることを明らかにした。
- 日本育種学会の論文
- 1994-09-01
著者
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