ネギ種子の貯蔵と浸漬乾燥処理により誘起された体細胞染色体異常
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概要
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採種後3年経過した栽培品種九条細ネギの気乾種子の初生根で,著しく高頻度の染色体異常を観察した。この種子を供試して,貯蔵による染色体異常の特性について調査するとともに,採種後間もない栽培品種石倉一本太ネギの気乾種子に浸漬乾燥処理を加え,染色体異常の型と頻度について調査した。ネギ種子の初生根における,染色体異常の頻度は,貯蔵が長期になるに従って高くなっていた。九条細ネギ(採種後3年)では,平均51%の染色体異常が観察され,染色体型の染色体断片化が高頻度にみられる点が特徴的であった。従って,その異常は主にS期以前に生じたものと推察された。また,その異常頻度は種子の発芽遅延と正の相関(r=0,955)があり,初生根長と負の相関(r=-0,689)が認められた。このことから,貯蔵による染色体異常には発芽生理が関与し,根の伸長に伴って減少してゆくと考えられた。ネギの気乾種子を水に浸漬後,50℃で乾燥処理をすると,初生根において染色体異常が誘起された。浸漬6および12時問後の乾燥処理では,染色体異常の頻度は乾燥処理時間の長さと正の相関が認められた(r_6_h=0.806,r_1_2_h:0.851)。浸漬18時問後の乾燥処理では,染色体異常の平均頻度が43.9%と最も高かったが,乾燥処理時間の長さと異常頻度の間に,相関は認められなかった(r_1_8_h=0.012)。浸漬乾燥処理による異常は,比較的染色分体型の染色体橋が多いことから,主に細胞分裂中に染色分体の融合によって誘発されると想われた。種子の貯蔵と浸漬乾燥処理は,やや異なった染色体異常をもたらすが,共に既知の染色体異常誘起物質を用いず,高頻度の染色体異常をもたらす点で注目される。従って,ネギ種子の採種後の乾燥や貯蔵には,特に,温度と湿度の調節に注意が必要であろう。
- 日本育種学会の論文
- 1978-12-01
著者
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