サツマイモの葉肉および懸濁培養細胞由来プロトプラストからの植物体再分化
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概要
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サツマイモは,交配不和合群が存在するために同一群内では交配が不可能であり,そのことが交配育種を進める上で大きな障害となっている.細胞融合により体細胞雑種の作出が可能になれば,新しい遺伝子型の作出が可能になると思われるが,未だサツマイモ品種のプロトプラストからの効率的な再分化条件は確立されていない.本実験では,サツマイモの葉肉および懸濁培養細胞由来のプロトプラストの単離,培養と植物体再分化を試みた.葉肉プロトプラストは,サツマイモ品種「中国25号」の無菌個体の葉身から作出した.葉の両面を力一ボランダムで軽く撫でて傷をつけた後,前処理液(0.3Mソルビトール,0.05MCaCl_2)に1時間浸漬した.その後,酸素液(K3培地に0.1%ペクトリアーゼY-23, 2%セルラーゼ・オノズカRS,5mMCaCl_2,0.5Mマニトールを添加)に浸漬し,25℃,45回/分で約6時間振どうした.ナイロンメッシュで濾過し,0.5Mマニトール液で3回洗浄した後,プロトプラストを精製するために20%ショ糖液の上に0.5Mマニトール液で再懸濁したプロトプラストを静かに重ね,150×gで遠心をかけた.プロトプラストの培養は,NH_4NO_3(200mg/l)およびKNO_3(1,OOOmg/l)の濃度を修正したKM8p培地(KaoandMichayluk,1975)にZEA(O.1mg/l),2,4-D(O.1mg/l),マニトール(0.5M)およびショ糖(10g/l)を添加した液体培地を用いて培養を開始し,その後30日ごとにマニトールの濃度を0.05M,0Mに順次低下させた.培養開始75日後,約1mmに生長したコロニーを修正MS培地(Murashige and Skoog1962,NH_4NO_3 800mg/l,KNO_3 1,400mg/l)にショ糖(20g/l),シエランガム(2g/l),2,4-D(O.5mg/l),ABA(1mg/l)を添加した培地およびこの培地にさらにKIN(0.5mg/l)またはZEA(0.5mg/l)を添加した3種類の培地に移植したが,培地問でカルスの形成に顕著な差は観察されなかった.約1か月後,生長したカルスをMS培地にショ糖(30g/l),ジュランガム(2g/l)を添加し,さらにKIN(1mg/l)あるいはZEA(O.5mg/l)を添加した再分化培地に移植した.また,再分化率を向上させるための硝酸銀(AgNO_3)の効果,あるいはカルスを再分化培地に移植する前に,乾燥した滅菌ろ紙に3日間置床する乾燥処理の効果について検討した.再分化培地にKINを添加した場合にはカルスはやわらかくなり再分化を認めることが出来なかったが,ZEAを添加した場合にはカルスはすべてコンパクトとなり,不定芽が分化し再分化植物を得ることができた.また硝酸銀の添加効果については明瞭ではなかったが,乾燥処理は再分化を向上させるのに有効であることが示された.
- 日本育種学会の論文
- 1994-03-01
著者
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村田 達郎
九州東海大学農学部
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岸本 真幸
九州東海大学農学部
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村田 達郎
東海大学農学部
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福岡 壽夫
九州東海大学農学部
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福岡 壽夫
東海大学農学部
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福岡 壽夫
九州東海大学
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村田 達郎
東海大学農学部 応用植物科学科植物育種学研究室
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