サツマイモ(Ipomoea batatas(L.) Lam.)の受精から胚発生過程と低稔実性との関連における組織学的研究
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概要
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サツマイモの低稔実性に直接関与する原因を究明するために,11品種を用いて14交配組合せを行い,受粉4,7時間および2日後の受精から胚発生過程を組織学的に観察した.開花当日の花粉稔性は供試したすべての品種で80%以上であり,受粉4時間後の柱頭上の花粉発芽もほとんどの交配組合せで10〜20%を示した.そのため花粉稔性あるいは柱頭上の花粉発芽が低稔実性の直接の原因であるとは考えられなかった.次ぎに受粉7時間後の子房の横断切片を作製し,花粉誘導組織を通過した花粉管数を観察した.その結果,交配組合せによって異なったが,花粉誘導組織を通過した花粉管数と一 当りの種子数との間には密接な関連は示されず,花粉管数の多少が稔実性に影響を及ぼす大きな原因であるとは思われなかった.さらに受粉2日後の子房の横断切片を作製し,花粉管の胚のう内への侵入および胚発生の状況を観察した.その結果,花粉管が侵入していない胚のうは,多くの場合卵装置の発達が途中で停止したために生じたと思われる異常胚のうであることが判明した.また,受粉2日後で観察された前胚数と一 当りの種子数との間に密接な関係が示されたために,受粉2日後で観察された前胚は途中で生育を停止することなく,完熟種子になることが観察された.以上の結果から,サツマイモの低稔実性の大きな原因は,花粉管が侵入しない異常胚のう数が多いためであることが判明した.
- 日本育種学会の論文
- 2003-03-01
著者
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