赤道準二年周期振動(QBO)と太陽活動に関連した北半球冬季成層圏循環の年々変動
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概要
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赤道準2年周期振動(QBO)と太陽活動に関連した、北半球冬季成層圏循環の年々変動についての統計的解析を行なった。解析にはベルリン自由大学の主観解析データ37年分と米国気象センター(NMC)の客観解析データ31年分を用いた。QBOの位相の定義にはシンガポール(1°N)における40-50 hPaの月平均東西風を、また太陽活動の指標には波長10.7 cmの放射強度を用いた。'HT period'と定義した期間(1962/63-1977/78)には、Holton and Tan (1980)が示したとおり、QBO西風相(W)における極夜ジェットの風速の東西成分が東風相(E)のそれに比べて強い。しかし、データ期間の後半(1978/79-1993/94)には、その差はかなり小さくなる。太陽活動の強さによって全データ期間を'Min'と'Max'に分けると、MinのグループではEよりもWにおける晩冬のジェットが非常に強く、その統計的有意性も非常に高いのに対し、Maxのグループではそのような傾向は見られない。HT periodの結果がMinの結果に近いのは、彼らの解析した期間に太陽活動極小期が二回、極大期は一回含まれていたからだと考えられる。初冬には、成層圏循環は太陽活動に関係なく赤道QBOと相関しているように見える。このような初冬と晩冬の違いから、赤道QBOは初冬の中高緯度循環に影響を与え、さらにその効果が太陽活動によって晩冬に影響を受ける、ということが示唆される。波成分についての解析の拡張も行なった。Minの結果はHT periodの結果と同じ傾向を持ち、WとEの差はHT periodよりもはっきりしている。Maxの結果は、晩冬にはMinと逆の傾向を示す。最後に、成層圏突然昇温の出現が、赤道QBOおよび太陽活動の両者と有意に関係していることを示した。冬季成層圏循環、QBO、太陽活動の三者の関係は、太陽フラックスと赤道東西風の二次元位相空間に大昇温の有無を図示することにより、明瞭に表現された。
- 社団法人日本気象学会の論文
- 1997-08-25
著者
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