西南暖地における稚苗稲作技術に関する研究 : 第5報 晩植え栽培における稚苗移植水稲の形質発現
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概要
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晩植え稚苗栽培用の品種が保持すべき特性を把握する目的で,短期栽培に適すると思われる早生,および中生品種の中から16点(主に各県の奨励品種から選出)を用いて,主要形質の発現様相を調査して次のことを明らかにした。(1)出穂があまり早すぎる品種は鳥類の喰害を被る危険が多く,また出穂が遅れる品種は登熟が悪く,精選米歩合を低下させることから,9月4,5日から10日頃までの出穂が好ましいことを明らかにした。(2)感光性程度は品種によってかなりの差があり,クジュウや農林22号は高く,ホウネンワセは最も低い。稚苗の晩植え栽培用としてはクジュウ程度の可消性栄養生長の期間が望ましい。(3)晩植え栽培によって草型が変動する。穂数型品種は穂数は増加するが穂長は変らない。穂重型および中間型品種は穂長が著しく短かくなり,穂数はあまり増加しない。偏穂数型品種は穂長はあまり短かくならないが,穂数は穂数型にほぼ近い増加を示す。(4)稈長は栽培地や栽培様式を変えることによって短稈化することを明らかにした。この傾向は倒伏を難化させることで,稲作上むしろ望ましいことであることを強調した。(5)収量が比較的高かった品種は,クジュウを最高にして,農林22号,さわのはな,秋晴,ナギホ,うこん錦,ヤマビコ,日本晴などの順にいずれも10a当り500kg以上の収量をあげた。これらの品種は草型や出穂特性がかなり広範にわたるために,安全多収品種をこれらの特性で指摘することはできない。(6)最後に,晩植え稚苗栽培用の品種として今後さらに附加されるべき特性について考察し,感光性に由来する可消性栄養生長の期間をもっと長くする育種の方策がとられ,増収効果の高い補償力のある草型の出現を期待して,稚苗用品種のあるべき姿を明確にした。
- 日本作物学会の論文
- 1972-06-30
著者
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