ダイズの登熟過程における炭素・窒素化合物の挙動

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ダイズ品種"キタムスメ"の葉、茎、莢、子実、根粒、根について、茎葉重最大期と収穫期の2時期に乾物、糖、デンプン、窒素、セルロース、ヘミセルロース、リグニン、遊離アミノ酸類、タンパク態アミノ酸類、アラントイン、アラントイン酸の量的変化を調査し、以下の結果を得た。1)最大期から収穫期にかけての茎葉乾物重の減少は小さく、デンプン集積量は減少するが、糖集積量は増加し、セルロース、ヘミセルロース、リグニン含有量はほとんど変化しないことから、登熟期間中に体構成炭水化物が呼吸や転流物質として再利用される程度は見掛け上小さい。2)植物体の全窒素集積量は最大期までに収穫期の64%が集積し、最大期以後の茎葉からの子実への見掛けの再転流窒素量は収穫期の子実の窒素集積量の34%に相当する。3)アラントイン含有量は茎と莢で全窒素量の約10%と多く、アラントイン酸は莢と茎以外には認められなかった。4)主要な遊離アミノ酸類は各器官においてアスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸であるが、これらの全遊離アミノ酸類量に対する割合は生育時期や部位により大きく変動し、茎と莢ではアスパラギンの割合は約50%と著しく高い。5)タンパク質のアミノ酸組成は生育時期や部位による違いは小さく、また、それぞれの部位における遊離アミノ酸組成とは著しく異なっている。6)以上のことから、葉・茎のタンパク質が分解・転流して子実のタンパク質に再編される際に、窒素と炭素は必ずしも行動をともにしておらず、窒素は葉・茎から子実に能率的に転流するが、その過程においてかなりの量の炭素がエネルギー源として消費されると考えられた。
社団法人日本土壌肥料学会の論文
1988-04-05

ダイズの登熟過程における炭素・窒素化合物の挙動

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