水稲の登熟過程における葉タンパク質の子実タンパク質への再編成

概要

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水稲において登熟期間中に、葉身タンパク質が分解し、子実に転流し、子実タンパク質に再編成される過程を知る目的で各部位における遊離およびタンパク態のアミノ酸組成について、水田と水耕(完全区と無窒素区)条件下で調査し、以下の結果を得た。(1)収穫期の籾中の窒素を、(a)開花期までに栄養器官に集積した窒素と、(b)開花後に吸収された窒素に分けると、差し引き計算法による見掛けの割合は水田稲では(a)70%、(b)30%であり、水耕[完全]稲では(a)7%、(b)93%である。しかし、^<15>N標識による水耕[完全]稲についての実際の割合は(a)54%、(b)46%であった。(2)可溶-N/全-Nは葉身では6~7 %でタンパク態が多く、稈では15%以上で転流形態が多く、籾では開花期には20%以上で遊離アミノ酸類態が多かったが、その後は3%程度でタンパク態が多かった。(3)水田稲における遊離アミノ酸類の組成によると、(i)開花期には葉ではグルタミン酸、アスパラギン酸の割合が高く、稈ではアスパラギン酸、グルタミン酸のほかに、アスパラギンの割合も高まり、籾ではアスパラギンの割合が圧倒的に高く、葉から籾に転流するにつれてアスパラギンの割合が高まり、(ii)収穫期に向かって葉・稈の窒素含有率が低下すると、各部位ともアマイドの割合が低くなり、葉から籾に向かうにつれてグルタミン酸の割合が高まった。(4)水耕稲の収穫期における遊離アミノ酸の組成によると、両窒素区とも葉から籾へ移行するにしたがって、アスパラギン酸の割合が高まった。また、登熟期間中窒素が供給された場合には窒素が供給されなかった場合に比べて葉身と稈ではアスパラギン酸が圧倒的に多く、アミノ酸類の大部分を占めていたが、籾ではアミノ酸組成に両区間ではほとんど差がなく、アスパラギン酸が大部分を占めていた。(5)タンパク態アミノ酸の組成は、処理、生育時期、部位による変動が小さく、遊離アミノ酸の組成と比べるとアスパラギン酸+アスパラギン、グルタミン酸+グルタミンの割合が低く、各種のアミノ酸の割合が相対的に高くなった。以上の結果から、(i)葉、茎、子実での遊離アミノ酸類の主要継体は生育条件によって変動すること、(ii)葉身のタンパク質の窒素が子実に転流して、子実タンパク質の窒素となる過程において、呼吸や新たな炭素の補給をともないつつアミノ酸の組換えが起ることが推定された。
社団法人日本土壌肥料学会の論文
1988-06-05

水稲の登熟過程における葉タンパク質の子実タンパク質への再編成

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