短期栽培用水稲品種の生育と養分吸収経過に及ぼす作期移動の影響

概要

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わが国の西南暖地の多種多様な水稲んも作期のいずれにも栽培が可能である短期栽培用品種、フジヒカリを供試して、移植(稚苗)時期を4月~7月にわたって移動させた場合の生育と養分吸収経過ならびに収量性について検討した。得られた結果の概要は以下のとおりである。1. 作期がおそくなるに従って、全生育期間および本田生育期間は短くなった。とくに、本田期間の積算気温は作期にかかわらず2300~2350℃でほぼ一定であり、6月以降の移植では約3カ月間の本田期間で収穫が可能であった。2. 作期が早いほど移植後の初期生育は劣ったが、出穂期および成熟期の地上部乾物重は優る傾向がみられた。また、出穂期から成熟期にかけての窒素の乾物減少量は、葉鞘と稈内に蓄積された炭水化物(全糖+デンプン)の減少量と平行して、作期が早いほど大きい傾向がみられた。3. 出穂期における株当たりの根量(根数および根乾物重)は作期の早い区ほど大きかったが、1茎当たりの根数には作期間の差が比較的小さく、根1本当たりの乾物重に著しい差異がみられた。4. 移植後初期の地上部の三要素吸収量は乾物増加量とほぼ平行しており、作期が早いほど劣った。また、出穂期におけるN吸収量は茎葉のN含有率の差により作期がおそいほど多くなったが、P、Kの作期間差はNに比べて小さかった。一方、成熟期の三要素吸収量には作期間の差が比較的小さく、また作期による一定の傾向は認められなかったが、P、Kは作期が早いほどやや多かった。そして、三要素間では作期にかかわりなく、K>N>Pの順に最高吸収量に達する時期が早くなった。5. 成熟期における地上部の三要素吸収量のうち、穂への配分割合は、N60~75%で作期がおそいほど低く、Pは70~75%で作期による差は比較的小さかった。一方、Kは20~30%でN、Pに比べて著しく少なく、さらに5月植以降では作期の遅延に伴って低下した。6. 本供試品種は普通期~晩植・晩期水稲して6月以降に栽培しても本田期間90日前後で400~450kgの収量が期待でき、短期栽培用品種として収量性のうえからも優れていることが示唆された。しかし、出穂期における地上部の吸収N量に対するもみ数生産能率は、4、5月植に比べて6月以降の移植で低下割合が大きく、吸収N量に比例したもみ数の増加がみられず、収量は劣った。
1988-06-05

短期栽培用水稲品種の生育と養分吸収経過に及ぼす作期移動の影響

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