水稲の有機栽培に関する継続試験 : 10年間の生育収量(栽培)
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概要
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岡山大学農学部附属農場の水田において,水稲品種日本晴を供試して有機栽培を10年間(1990-1999年)継続した.試験区として基肥に完熟堆厩肥と発酵鶏糞を用い,農薬施用の有無により有機・無農薬区(ヒエ抜き,油粕追肥),有機・減農薬区(除草剤,油粕追肥),有機・有農薬区(除草剤+殺虫殺菌剤,化学肥料追肥),さらに化学肥料のみ用いた慣行区(除草剤+殺虫殺菌剤)を設定した.10年間の平均収量は,有農薬区(514g/m^2)と慣行区(513g/m^2),減農薬区(505g/m^2)でほぼ等しく,これらに比べ無農薬区(459g/m^2)では減収の程度(約10%)が大きかった.無農薬区における雑草の発生量は年次により変動し,優占種コナギとの養分競合による最高分げつ数,穂数の減少が減収要因であると考えられた.紋枯れ病の発生が認められたが,収量に及ぼす影響は小さかった.害虫ではコブノメイガが1995年に多発生したが,最も発生が多く認められたのはトビイロウンカであった.無農薬区では1990年,1991年と1997年に坪枯れの発生が認められたが,いずれの年も収穫直前であったため収量に及ぼす影響は小さかった.ウンカ・ヨコバイ類とクモ類の発生個体数の間には密接な正の相関関係が認められ,被食者個体群の増大とともに広食性天敵個体群も増大していることが推察された.有機物の連年施用により,土壌全炭素,全窒素含有率が増大し,地力の向上が窺えた.本研究の結果,基肥に堆厩肥と発酵鶏糞,追肥にナタネ油粕を用いることにより,化学肥料と同等の肥効が確保され,除草剤を施用しなくても,ヒエ抜きを行うことにより,慣行区の約90%程度の収量が確保された.カブトエビによる雑草防除,天敵類による害虫個体群抑制の可能性を議論した.
- 2001-12-05
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