Effects of Rising Temperature on Growth, Yield and Dry-matter Production of Winter Wheat
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概要
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温暖化による気温上昇を想定し,温度勾配チャンバー(TGC:Temperature Gradient Chamber)を用いて播種から収穫までの長期間の気温上昇処理が,コムギの生育収量,乾物生産におよぼす影響を検討した.TGC は,水田内に設置したものを使用し,換気ファンを常時稼動させることにより昼温のみ温度勾配を生じさせ,栽培試験を行った.コムギ品種イワイノダイチを供試し,開口部から閉口部に向かって対照区TG1,高温区TG2,TG3,TG4の4試験区を配置した.1週間毎の生育調査に加え,部位別乾物重の調査を栄養成長期,出穂期,登熟期,収穫期に行った.また,収穫期に収量と収量構成要素を調査した.TGC 内の気温は,開口部のTG1に比べて閉口部のTG4で平均気温で2.8℃,最高気温で5.8℃の気温上昇がみられた.草丈は,生育期間を通してTG1に比べTG2~TG4の高温区で伸長し,最終草丈はTG1(72.5㎝)<TG2(74.9㎝)<TG3(75.6㎝)<TG4(79.9㎝)の順となった.茎数は,TG1に比べて,TG2では増加,TG3,TG4では減少する傾向がみられたが,有意性は認められなかった.全乾物重は高温区で増加する傾向がみられ,収穫期の全乾物重はTG1に比べてTG2,TG3,TG4でそれぞれ25.9 ,21.2 ,23.2 増加した.出穂後の個葉光合成速度は高温区で低下し,TG1に比べてTG4で出穂15日後には27.8 ,出穂30日後には63.6 と著しく低下した.子実収量は,TG1(218 gm-2)<TG4(225 gm-2)<TG3(230 gm-2)<TG2(248 gm-2)の順となり,これには1穂粒数の増加,千粒重の低下が関係していた.1穂粒数は,高温区で1穂小花数が増加し,それに伴う稔実粒数の増加により多くなった.千粒重は,登熟中期から収穫期にかけての粒重がTG1,TG2では増加したものの,TG3,TG4では抑制傾向にあり,早期に登熟が完了したため高温区で小さくなった.TG2の子実収量は,1穂粒数の増加によるシンクの拡大に加えて,登熟後期まで粒重の増大が継続したため増収となった.TG3,TG4では,粒重が小さく,シンクの拡大を補償できなかったことが減収につながった.気温と子実収量の関係をみると,登熟期の平均気温が28℃を超えることで減収につながることがわかった.以上より,気温上昇は,コムギの生産性を概ね向上させるものの,子実収量に与える影響は稔実粒数の低下よりも,登熟中期以降の子実肥大が影響すると推察された. Many studies on the crop response to climate change have been examined for isolated plnts or plants grown in a small-scale popuration. We constructed a Temperature Gradient Chamber(TGC) in a lowland field of Okayama University to clarify the effect of rising temperature on growth, yield and dry-matter production of winter wheat during the whole growth season. The four experimental plots were arranged by the distance from the intake side, TGI(control), TG2, TG3, and TG4. The temperature gradient occurred from TG1 to TG4, the daily ,mean temperature in TG4 increased 2.8℃ more than that of TG1. The dry weight in hight-temperature plots was larger than TG1. The grain yield per M2 was lowest in TG1(218g) and highest in TG2(248g), but gradually decreased with resing temperature in TG3(230g) and TG4(225g). The percentage og spikelet sterility and floret sterillity were not significantly different among the plots. The grain yield tended to decrease with higher the temperature more than 28℃ during the ripening period due to the decrease in dry-matter accumulation in the panicle at the latter ripening period. Clearly, rising temperature increased the wheat grain yield until 28℃ of daily mean temperature during the ripening period, furtuer rise in temperature limited the yild due to the decline in photosynthetic activity.
- 岡山大学農学部の論文
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- (「植物生産農学実験マニュアル」日向康吉・羽柴照義 編. ソフトサイエンス社, 東京. 1995年11月, 470頁, 6932円.)