日本在来稲品種における深水下での節間伸長性の存在
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概要
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岐阜県海津郡の木曾, 長良, 揖斐の三河川に囲まれた地方は, 海抜60cm位の低地で, 治水の十分に行われない明治末期までの150年間に堤防の決壊は44回にもおよび, 水害のため稲は3年に1度しか収穫できなかったといわれる. そのため農民は鋭意, 水害に強い稲品種を選択してきたといわれ, 清水太八(1912)^*は水害に強い品種として11品種をあげている. そのうち5品種(目黒, 強力, 七福神, 青鬼, 竹成)が農水省農業生物資源研究所に保存されているのを見出したので, その深水下での節間伸長性をしらべた. これらの在来品種は, 連続照明下で栽培させた場合は多少の程度の差はあるがいずれも, 花芽分化なしに深水下で節間伸長性を示すことを認めた. また, 深水中で伸長した節間の節よりは, 不定根の発生がみられた. しかし, 熱帯アジアの浮稲品種と比較すれば, 節間伸長性も, 高節位よりの発根性も, その程度ははるかに及ばない. GA_3は外から与えると, 水に浸漬後の節間伸長を促進し, また浸漬前にGA生合成阻害剤で処理すると, 深水伸長性は全くみられなかった. これらの日本在来稲品種の深水下の節間伸長においても, 内生GAが重要な役割を演じているものと推定された. 従来, 日本稲においては花芽分化なしの節間伸長は, 高濃度のGA_3で処理した時などの外には, 知られていないので, この在来品種における深水下での節間伸長性の存在は, 育種材料としても興味あるものと考えられる. (^*清水太八, 1912, 水に強き稲の種類, 大日本農会報第367号:64-66).
- 日本作物学会の論文
- 1987-06-05
著者
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