S.mutansに対するTiO_2添加シーラントの抗菌性
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概要
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光触媒反応半導体TiO_2微粒子(Tp)を小窩裂溝予防填塞材に0.5, 1.0および5.0% w/v の割合に添加, 重合し, Streptococcus mutans (S. mutans) に対する抗菌性を検討した. すなわち, Tp を添加重合した小窩裂溝予防填塞材 (以下 Tp-S 材と略す.) を生理食塩水中で Tp の励起のために120分間, 光照射したのち, S. mutans (Ingbritt, NCTC 10449およびGS-5) 培養液 (1×10^8 cells/ml) 中に浸漬し, 光照射しながら37℃, 48時間培養した. その後, 付着細菌を超音波洗浄で離脱させ, 各菌株に対する Tp の抗菌性を洗浄液中の生菌数の割合から判定した. Tp-S 材への細菌の付着状態は, SEM 写真から算出した付着面積で検討した. また, Tp-S 材における Tp の分散状態はエネルギー分散型走査X線分析装置によって観察, 分析し, 物理学的性質については ISO および JIS の規格に準じて曲げ強度およびブリネル硬さから検討した. Tp-S 材中の Tp は, 表面よりも縦断面で比較的均一に分散していた. Tp 添加培養液中における S. mutans の生菌数は, Tp 濃度の増加に伴って低下した. また, 細菌の Tp-S 材への付着状態は, 菌株により異なり, かつ Tp 濃度が5% w/v の場合に最も著明な変化を示した. すなわち, S. mutans Ingbritt では菌体が観察されず, 線維様の細菌合成不溶性物質のみがみられ, またNCTC 10449 ではわずかに菌体の連鎖が認められたのに対して, GS-5 では菌体が凝集する像がみられた. 細菌の Tp-S 材への付着面積は, Ingbritt および NCTC 10449 ではS材におけるよりも著明に減少したが, GS-5 ではその差は認められなかった. Tp 添加濃度の増加に伴って Tp-S 材の曲げ強度は低下し, そのブリネル硬さはわずかに増加した. 以上のことから, 小窩裂溝予防填塞材に Tp を添加して光照射を行うと, S. mutans に対する抗菌性が発現されることが明らかになった.
- 大阪歯科学会の論文
- 1994-04-25
著者
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