トランスパラタルアーチ装着により影響をうける無声破裂音の経日的変化
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概要
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矯正臨床ではアンカレッジの強化,上顎大臼歯のコントロールなどでトランスパラタルアーチ(以下TPA)を使用することが多い.TPA装着により患者の発音が不明瞭になることは明らかである.本実験では,発音時に舌が口蓋に接触または近接する無声破裂音/ka/,/ki/,/ku/,/ke/,/ko/,/ta/,/te/,/to/について,発語明瞭度検査,発語難易度検査,時間要素分析,フォルマント周波数分析を行ってTPA装着により生じる発音障害が経口的に減弱,消失していく過程を多角的に分析した.被験者は発音,聴覚機能に異常がなく,矯正治療中ではない成人12名とした.被験者に口蓋から1mm浮かせたTPAを5日間装着させた.音声標本採得は装着前,装着直後,装着1日後,2日後,3日後,4日後,5日後の7時期とした.被騒音は/a/を先行母音に,無声破裂音を後続子音にもつ連続音節とした.コンピュータ画面上に音声波形および高速フーリエ変換後のスペクトログラムを表示し,時間要素分析およびフォルマント周波数分析を行った.発語明瞭度検査では,各語を2名の言語聴覚士が聴取して不明瞭度を判定した.時間要素分析の各計測項目および第1,第2フォルマント周波数分析について,「装着前,装着直後,装着1日後,装着2日後,装着3日後,装着4日後,装着5日後」の間における差異を調べた.発語明瞭度検査では,装着直後/ki/,/ke/,/te/で不明瞭度値が最大となり,経日的に減少していった./ki/以外の無声破裂音は,聴覚的には装着2日後には装着前の発音に戻ることがわかった.フォルマント周波数分析では/ki/,/ke/の子音および/ki/,/ke/,/te/の後続母音の周波数が装着直後に変化し,その後経日的に装着前と同程度を示した.発語難易度検査より発語明瞭度検査のほうが速く装着前の評価に戻ることが明らかとなった.聴覚的分析と舌の位置を示すフォルマント周波数分析とは経日的に似た変化傾向を示した.また,発語難易度検査と時間要素分析とは経日的に似た変化傾向を示した.
- 2002-03-25
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