ヒト歯肉癌および上咽頭癌異種移植系にみられる悪性度とサイトケラチンの発現
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概要
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サイトケラチン(CK)は, intactな状態で直径10 nmの線維を形成する上皮細胞骨格成分で, 現在21種類が同定されている。それらの発現は, 上皮組織の機能的および形態的構造によって規定されるものの, 癌細胞では, 正常細胞の特徴を残しつつ多様な発現を示すことから, CK発現の検索は, 癌の悪性度の判定や癌患者の治療方針の策定に有用な指針を与えるものとの見解が提示されている。しかし今までの報告は, 2, 3のCK分子種に限定して免疫組織化学的検索を行ったものがほとんどであり, とくにヒト歯肉や頭頸部原発癌のCK発現を生化学的に検索した報告は数少なく, それらの細胞骨格構造と機能発現との関連については不明瞭なところが多いのが現状である。このような背景から本研究では, 臨床的健全歯肉とヒト頭頸部原発癌ヌードマウス移植系に発現するCKを免疫組織化学的に検索するとともに, 新規のCK抽出操作法で組織からCKを抽出して生化学的に検索し, ヒト頭頸部原発癌の悪性度とCKの発現様式との関連性について検討を加えた。CKは, 組織乾燥試料を低張性緩衝液(Triton X-100含有Tris-HCl緩衝液)で前処理したのち9.5 M尿素含有同緩衝液で抽出した。CK抽出液の一次元SDS-PAGEとそのデンシトグラムから, 高分化型ヒト歯肉癌ヌードマウス移植系(GK-1)ではCKに相当する40 kDaから70 kDaの広範囲な位置に多数のバンド(ピーク)が認められ, 低分化型ヒト上咽頭癌ヌードマウス移植系(KB-N)では, それらに加えて70 kDa以上の位置に4個のバンド(ピーク)が検出された。また二次元電気泳動のペプチドマップから, GK-1ではCK1, 5, 6, 8, 10, 11, 14, 18および19の発現が, KB-NではCK5, 6, 7, 8, 10, 13, 14, 17, 18および19の発現が認められた。さらに, ウェスタンブロッティングから両移植系に発現したCK18とGK-1に発現したCK19は分子サイズに多様性を伴うことが明らかとなった。これらのCK分子を免疫組織化学的に検索したところ, GK-1では, CK1, 5, 6, 10および14に対する反応がKB-Nより強く, KB-Nでは逆にCK8, 18および19に対する反応が強く, その範囲も広かった。また, GK-1のCK8は胞巣内辺縁部の癌細胞で, CK19は大きい癌胞巣内のほとんどすべての癌細胞でそれぞれ強陽性反応を示した。以上の結果は, ヒト頭頸部原発癌細胞におけるCK1, 8, 18および19の発現, そしてCK18および19タンパク分子の化学的修飾が, 癌のもつ悪性度と関連することを示唆するものである。
- 大阪歯科学会の論文
- 1997-06-25
著者
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