ヒト大腸癌におけるGalNAc-T3発現は新しい予後マーカーとなる

概要

論文の詳細を見る
【目的】GalNAc-T3はムチン型(O型)糖鎖合成の出発点として働く酵素であり、腺組織特異的に発現している。GalNAc-T3の癌細胞における詳細な作用は未だに不明の点が多い。そこで我々はGalNAc-T3発現とヒト大腸癌の臨床病理学的因子、予後との相関を検討した。【方法】(1)対象は1980年5月から1985年5月の間に当科で摘出された大腸癌106例(結腸癌57例、直腸癌49例)で男性63例、女性43例であった。年齢は29歳から83歳、平均年齢は59歳であった。観察期間は0.3ヶ月から220ヶ月、観察期間の中央値は108ヶ月であった。追跡調査率は100%であった。(2)抗ヒトGalNAc-T3ポリクローナル抗体を用い、パラフィン包埋切片で免疫組織化学染色を行った。症例をGalNAc-T3陽性症例、GalNAc-T3陰性症例の2群にわけ、予後規定因子との相関、長期予後に及ぼす影響を検討した。【結果】(1)正常粘膜では免疫染色で全例GalNAc-T3が発現していた。(2)組織型別では高分化型腺癌、ムチン型でGalNAc-T3発現が高率であり、GalNAc-T3発現と組織型との間に統計学的に相関関係を認めた(p=0.0311)。また、壁深達度とも相関関係を認めた(p=0.0314)。(3)全症例、分化度別における検討でもGalNAc-T3発現陰性患者の生存率は、GalNAc-T3陽性患者より悪かった。(4)多変量解析でGalNAc-T3は独立した予後因子であった(p=0.009,Hazard Ratio=0.491)。【結語】本研究はヒト癌組織におけるGalNAc-T3の発現と分化度別の検討を含めた予後との関連を明らかにした最初の報告である。GalNAc-T3は、ヒト大腸癌における新しい予後マーカーであると考えられた。
産業医科大学学会の論文
2002-03-01

ヒト大腸癌におけるGalNAc-T3発現は新しい予後マーカーとなる

スポンサーリンク

概要

著者

関連論文

スポンサーリンク