4.7T定常磁場の催奇形性ならびに骨軟骨代謝への影響
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概要
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(目的)強定常磁場の生体への影響を調べるために、妊娠マウスを4.7T定常磁場に曝露させ、マウス胎仔の催奇性障害および軟骨内骨化に関与するといわれるvascular endothelial growth factor(VEGF)の発現を比較検討した。さらにin vitroで、ウサギ成長軟骨板のDNA合成能およびプロテオグリカン(PG)合成能を評価した。(方法)動物用MRI装置の4.7T超伝導磁石(空芯口径400mm)の均一定常磁場内で、主要器官形成期である胎齢7.5〜9.5日のICRマウスを48時間曝磁させた。また奇形の陽性対象として胎齢7.5日目に2Gy γ腺照射した。胎齢18.5日目に開腹にて胎仔を摘出し、死亡胎仔および外表奇形の判定を行った。さらに、Inouye法&Kimmel法にて骨格標本を作製し、骨形態異常を調べた。また胎仔の胸骨をパラフィン包埋切片を作製し、胎齢16.5日目および18.5日目にVEGFの発現を免疫染色し検討した。日本白色ウサギの肋軟骨成長軟骨板より軟骨細胞を単離培養し、subconfluentな状態になったところで、同様の動物用MRI装置内にて、6時間曝磁させた。DNA合成能およびPG合成能をそれぞれ^3H-Thymidine(TdR)および^<35>S-sulfateの取り込み量にて評価した。(結果)曝磁した妊娠マウス8匹より摘出した胎仔107匹では平均体重1.58±0.11g、胎仔死亡2匹(1.9%)、外表奇形0匹、正常が105匹(98.1%)であった。頚肋、腰肋、頚椎分離あるいは胸骨の異常など形態的に変化のあったものをすべて骨奇形とすると、骨奇形は31匹(29.0%)であった。対照群の妊娠マウス13匹より摘出したマウス193匹では、平均体重1.56±0.10g、胎仔死亡6匹(3.1%)、外表奇形1匹(0.5%)、正常186匹(96.4%)であった。骨奇形は48匹(24.9%)であった。両群の胎仔体重、胎仔死亡、外表奇形、骨奇形の発生に有意差は見られなかった。2Gy照射群では、対照群に比し、胎仔体重は有意に減少し、胎仔死亡、外表奇形、骨奇形の発生は有意に増加していた。胎齢16.5日目の胸骨におけるVEGFの発現は、曝磁群で成長軟骨板の軟骨細胞で検出され、対照群でその反応は減弱していた。しかしながら胎齢18.5日目では対照群でその反応は増強していた。曝磁した軟骨細胞の^3H-TdRの取り込み量は、対照群に対して有意差は認められなかったが、^<35>S-sulfateでは曝磁で有意に増加していた。(結論)4.7T強磁場は、生体に対して有害な影響を及ぼさないが、VEGFの発現を促進し、内軟骨内骨化を促進する可能性を示唆した。
- 2002-03-01
著者
-
法村 俊之
産業医科大学放射線衛生学教室
-
内田 宗志
産業医科大学病院整形外科
-
内田 宗志
産業医科大学医学部整形外科学
-
岡崎 龍史
産業医科大学医学部放射線衛生学
-
大津山 彰
産業医科大学医学部放射線衛生学
-
法村 俊之
産業医科大学医学部放射線衛生学教室
-
法村 俊之
産業医科大学医学部放射線衛生学
-
法村 俊之
産業医科大学アイソトープ研究センター
-
Norimura Toshiyuki
Department Of Radiation Biology And Health School Of Medicine University Of Occupational And Environ
-
法村 俊之
産業医科大
-
Norimura Toshiyuki
Dept Radiation Biology &health
-
大津山 彰
産業医科大学アイソトープ研究センター
-
法村 俊之
産業医大・放射線衛生学
-
岡崎 龍史
産業医科大学医学部放射線衛生学講座
-
大津山 彰
産業医大・放射線衛生学
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