アルコールをとりまく産業保健 : おわりに
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概要
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今回のシンポジウムの成果として、就労飲酒者の抱える諸問題と、その解決に向けた産業医学と臨床医学からの取り組みの現状を把握することができ、さらに将来に向けて、その活動を方向付けすることができた。また、産業医学現場で遭遇する具体的疑問に対して、その問題解決につながるようなそれぞれの専門の立場からアドバイスを貰うこともできた。まず、竹田透氏より、産業医現場での問題事例について、就労上と業務遂行上のカテゴリーから3段階に分類して、具体的な報告がなされた。引き続き、産業医の立場から廣尚典氏より、それらの問題への対策の現状が報告され、特に、従業員からの信頼に基づいて幅広く職場の情報を収集する地道な活動の必要性が述べられた。次に、メンタルヘルスの問題が取り扱われた。中村純氏は、アルコール性精神症状、特にアルコール症による二次性うつ病について述べられた。永田頌史氏は、問題飲酒行動に対する精神保健からの取り組みについて述べられ、3次予防の効果的方法が必要であることを指摘された。最後に、身体の問題、臓器障害が取り扱われた。丸山勝也氏より、発症前段階での早期教育が重要であり、具体的な対策として国立療養所久里浜病院ではalcohol primary care program(APP)を新設したことが述べられた。また、私は、アルコール性肝障害については遺伝子保健の応用から危険群が設定でき、飲酒開始年令以前に啓蒙教育が可能となることを報告した。フロアからも質問や指摘がなされ、飲酒に対する社会的風土や寛容さについての言及から、東西の文化比較にまで発展した。ここでは、問題飲酒に対しては、より毅然とした対応が望ましいとの意見の一致を見た。総合討論の結果、社会に対する啓蒙を根気強く継続することを第一とし、社会医学、臨床医学(心と身体)を含めた包括的な取り組みが今後の課題であることが確認されて、閉幕となった。
- 2002-03-01
著者
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