アルコールをとりまく産業保健 : アルコール性肝障害発症機序とその予防医学への応用
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
「酒は百薬の長」とも「3盃の酒、人を飲む」とも。産業保健業務現場で、アルコールと肝臓病に関して多くの質問を受ける。アルコール性(ア性)肝障害発症機序とその予防の現状を総括したい。Q1.腸管内細菌が肝臓を悪くすると聞いたが、本当か? Q2.男女差は? 肝硬変になりやすい遺伝子ってあるの? Q3.休肝日のとり方は? Q4.ウィスキーの方が良いの? Q5.食べもので注意すべきことはなに? Q6.太った酒のみと痩せでは、どちらが悪いの? 薬剤性肝障害の一般論をア性肝障害に当てはめると、量依存性に脂肪肝に至る内在毒的第1相(代謝相)と、肝内の免疫担当細胞の相互作用が関与する特異体質的第2相(免疫相)から肝炎や肝硬変へ至ると考えられる。常習飲酒は、腸管内細菌叢変化からエンドトキシン(LPS)量を増加させ、しかも、腸管透過性を亢進させる。肝には、腸管より侵入した異物を処理するクッパー細胞があるが、常習飲酒でこの機能が亢進している.そこで、炎症性サイトカインが放出され、肝を主体に炎症がおこり、ア性肝炎が惹起される。ア性肝障害の個人差を決定するファクターは2つある。1つがアルコール代謝である。端的にいえば、アルコール代謝が速くて、アセトアルデヒド代謝が遅いと、アセトアルデヒド毒性が増強される。2つ目はLPSによる炎症性サイトカイン産生の個人差である。LPS受容体(CD14)やTNFα遺伝子プロモータに個人差があるとされる。女性の方が少量飲酒でア性肝障害が出現するが、これも炎症性サイトカイン産生が女性のほうが高いためとされる。栄養指導のポイントは、やせ型には高蛋白食、肥満型には低脂肪食を勧めるのが良い。高脂肪食は肝障害を促進する。また、肥満者は肝硬変に至る危険性が高い。さらに、脂肪細胞産生物質が、インスリン抵抗性を惹起することなどから、生活習慣病の「死の4重奏」の指揮者がアルコールであることが多くみられる。
- 2002-03-01
著者
関連論文
- Autoimmune cholangiopathyの経過中にVogt-小柳-原田病を発症した1例
- 長期アルコール投与が肝・脾のケモカイン誘導能に与える影響と その雌雄差について
- 17. レチノイドのラット大腸癌に及ぼす影響とラット大腸癌の肝転移巣のMRI (Magnetic resonance imaging)による観察 (第16回産業医科大学学会総会学術講演会記録)
- アルコール性肝障害におけるエンドトキシン-肝マクロファージ-ケモカイン Cascade の重要性
- 29. 産業医科大学医療技術短期大学生におけるB型肝炎ワクチン接種について (第12回産業医科大学学会総会学術講演会記録)
- アルコールをとりまく産業保健 : おわりに
- アルコール性脂肪肝における虚血再灌流後の細胞壊死とアポトーシス機序について
- 28. アルコール性肝障害の際の好中球浸潤における接着分子やサイトカインの役割 (第14回産業医科大学学会総会学術講演会記録)
- アルコールをとりまく産業保健 : アルコール性肝障害発症機序とその予防医学への応用
- 35. 心拍の動脈圧反射反応性に及ぼす体冷却の影響 (第16回産業医科大学学会総会学術講演会記録)
- アルコール性肝障害進展における活性化肝マクロファージの中心的役割
- Usefulness of the serum ICAM-1 level as early predictors of effectiveness of interferon therapy for chronic hepatitis C.