アルコールをとりまく産業保健 : プレアルコホリクスに対する入院教育プログラム
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概要
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我国は飲酒に寛容な社会。そのような中ではアルコール依存症(ア症)に対する誤解、偏見が存在する。そのため我国では240万人以上存在すると考えられるア症が、ア症として病院を受診する数は約23,800人と極めて少ない。一方アルコール性臓器障害として病院を受診する人は多く、飲酒に起因する医療費は約1兆1千億円で総医療費の約7%を占める(1987年)。また一度ア症となると非常に難治性であり早期の治療が望まれる。そこでプレアルコホリクスの段階で受診し易くすることにより、ア症への進展を防止し、それにより医療費の節減に寄与することを目的として当院では新しい入院プログラムであるアルコールプライマリーケアプログラム(APP)を新設した。APPでは、常習飲酒家で職場の健康診断でアルコール性肝障害などの比較的軽いアルコール性臓器障害を指摘されているが、断酒あるいは節酒が出来ないプレアルコホリクスを対象とし、精神科ではなく内科病棟に1週間の入院で、臓器障害のドック式検査と、ア症の予防教育を行い、その結果を本人および産業医にアルコールノートとして発行する。また健康保険が適用(本人負担約4万円)される。現状の問題点は、企業の産業医からの紹介患者数は少なく、その多くは既にア症の患者であり、プレアルコホリクスの場合でもその否認は打破されておらず、そのため節酒あるいは断酒に結びついていないことである。さらにその後の経過についてのフォローアップが出来ていない。今後の課題として、酒害教育やプレアルコホリクスの段階での治療の重要性についての啓蒙活動を行いAPPについての内容や対象者について産業医に周知徹底させると共に、より簡略かつ簡便な短期間でのプログラムや否認を打破する治療手法の開発、産業医との連携による充分な期間のフォローアップなどがあげられる。
- 産業医科大学学会の論文
- 2002-03-01
著者
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