家族とともに生活した 18 トリソミーの長期生存例 : 従来の医学的意志決定の再検討(第 5 回学術大会発表原著)

概要

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新生児医療における生命倫理、特に絶対予後不良あるいは致死的とされる先天性疾患をもつ新生児に対する倫理的観点からの治療方針決定については議論されることが多い。われわれの施設では治療選択をめぐる問題に遭遇した際、家族の意向を尊重しつつ医療スタッフ全員の話し合いの上で、疾患の重症度による医療レベルの4つのクラス分類(クラスA;あらゆる治療を行なう、クラスB;一定限度以上の治療は行なわない、クラスC;現在行なっている以上の治療は行なわず一般的養護に徹する、クラスD;これまでの治療をすべて中止する)を適用することでこれに対応している。18トリソミーはその生命予後の極めて不良なことからクラスCとされることが多かった。今回、出生当初は従来通りクラスCとされたが、経過が良くクラスBとして入院管理された後、心不全治療を続けながら退院し、家族とともに幸福に生活した18トリソミーの長期生存例を経験した。医療方針をめぐる意志決定に際しては正確な医学的情報が中心となるが、この例から診断とその従来の予後判定のみから結論を急ぐことがあってはならないと考える。
日本生命倫理学会の論文
1994-10-20