Helicobacter pylori除菌治療による薬剤感受性の変化と血清IgG抗体価の推移
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概要
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目的:Helicobacter pylori (H. pylori)の除菌治療前後にamoxicillin(AMPC)とclarithromycin(CAM)の感受性試験を行い,除菌治療に伴うH. pyloriの薬剤耐性について検討するとともに,除菌成功例と失敗例に於ける血清抗H. pylori IgG抗体価の推移を調べ,より有効な除菌療法の開発と除菌効果判定基準を作成するための基礎的研究を行うことを目的とした.対象と方法:1994年から2001年までに山口県厚生連長門総合病院内科を受診し除菌治療を希望した患者を対象とした.胃粘膜のH. pyloriの検出は培養法,ウレアーゼ法および組織学的および免疫組織学的診断法にて行った.薬剤感受性試験は,最小発育阻止濃度(MIC)測定法で行った.除菌治療はproton pump inhibitor(PPI)と抗菌薬,さらに胃粘膜防御因子増強剤を加えた併用療法を行った.血清抗H. pylori IgG抗体価の測定には,HM・CAPを用いた.除菌治療終了4週以後にすべての診断法で陰性の場合を除菌成功例と判定した.結果:除菌治療前に得られた菌株のCAMとAMPCに対する耐性率(一次耐性率)を調べたところ,この8年間にAMPC耐性株は検出されなかったが,CAMに対する一次耐性率は徐々に増加している傾向が見られた.これらの症例の一部について,除菌治療前後のH. pyloriの薬剤感受性を調べたところ,除菌治療前に得られたH. pylori 85株に占めるCAM耐性株は8.2%であったが,治療後の分離株34株では73.5%が耐性株であった.その頻度は除菌失敗例で高かった.一方,除菌失敗例にもAMPC耐性株は検出されなかった.血清IgG抗体価を調べたところ,除菌不成功例では除菌前と変化はなかったが,成功例では有意に低下した.結論:より効果的な除菌治療を行うためには薬剤感受性試験を治療前後に実施する事が重要であり,また,除菌治療後の成功例と失敗例の推定に血清IgG抗体価の測定が有用であることが示唆された.
- 順天堂大学の論文
- 2002-12-12
著者
-
常岡 英弘
保健学系学域病態検査学分野
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常岡 英弘
山口県厚生連長門総合病院研究検査科
-
松岡 周二
順天堂大学医学部病理・腫瘍学
-
松本 高明
順天堂大学医学部病理学第二講座
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常岡 英弘
山口県厚生連 長門総合病院 研究検査科
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常岡 英弘
山口県厚生連長門総合病院検査科
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