有限の待ち合い室を有するGI/G/1待ち行列システムに対する拡散近似 : II-定常状態における挙動
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概要
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有限の待ち合い室を有する待ち行列系GI/G/1(N)の定常状態における挙動を拡散近似の手法を用いて解析する。この系においては、待ち合い室が一杯の時に到着した客は失われるものとする。この意味で、待ち合い室が一杯の状態を損失状態と浮ぶことにしよう。本論文の目的は、損失確率、すなわち定常状態において系が損失状態にある確率と系内人数の分布及びその平均値に対する使い易い近似式を与えることにある。時刻tにおける系内人数をQ(t)で表わし、Q(t)を近似する拡散過程をX(t)とおく。このとき、X(o)=x_0(<N)から出発して初めて損失状態に達するまでの時間:T_d(x_0、N)=inf{t≧O|X(t)=N、X(o)=x_0}については、客の。verflowに関連して既に著者の前論文で解析した。一つの損失状態の終了は、その時サービス中である客の退去により起こるから、引き続く二つの損失状態の時間間隔はT_d(N-1、N)によって近似できる。また、同じ理由から損失状態の継続時間、すなわち損失時間は客の残余サービス時間に等しいことがわかる。従って、次の仮定をおくことで再生理論による定式化が行われる。すなわち、『全てのX∈〔O、N)に対して損失期問はT_d(X、N)と独立であって、互いに独立で同一の分布に従っている』ものとする。この仮定のもとでは、損失状態及び非損失状態が開始される時点は再生点になり、これら二つの状態は交替再生過程を成すことが容易に示される。定常状態における損失確率と系内人数の分布が再生方程式から導かれ、特に後者を適当に離散化することによって、平均系内人数に対する近似式が導出される。このようにして得られる解は、X(t)の原点における境界条件として反射壁を用いているため、Nの値が小さい場合には近似度が悪くなることが示される。そこで前論文で考察された境界条件の補正を適用し、Nの値が小さい場合の定常状態における損失確率、系内人数の分布、平均系内人数に対する補正近似式が導出される。最後に、以上の近似式の精度を評価するために、M/M/1(N)系に対する解析解及びその他の系に対するGPSSによるシミュレーションの結果が、近似式の値と数値的に比較される。多くの数値結果より、近似式が実用上十分に正確であることが示される。
- 社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会の論文
著者
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