有限の待ち合い室を有するGI/G/I待ち行列システムに対する拡散近似 : I-ファーストオーバーフロー・タイム
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
有限の待ち合い室を持つ待ち行列系を考えよう。この待ち合い室が一杯であるときに到着した客は、系内に入ることを許されないものとする。この現象は客のオーバーフローと呼ばれ、"良質のサービス"という観点からも、"損得勘定"という観点からも、極力避けることが望ましい現象である。このオーバーフローに対して、サービス開始後初めてオーバーフローが起こるまでの時間をfirst overflow timeと呼ぶことにする。すなわち、系内に許される最大客数を(N-1)人、サービス開始時にi人の客がいる場合のfirst overflow timeは次のように定義される。T(i、N)=i・f{t≧0|Q(t)=N、Q(0)=i}、N≧2、0〓i〓N-1。ここで、Q(t)は時刻tにおける系内客数を表わしている。M/M/1系に対しては、原点に反射壁、Nに吸収壁を有する出生死滅過程の、吸収壁へのfirst passagetimeがfirst overflow timeに対応し、Saaty(1961)によって既に解析されている。本論文ではGI/G/1系に対するfirst overflow timeを拡散近似の手法を用いて近似的に解析する。すなわち、Q(t)を近似する拡散過程をx(t)とするとき、T_d(i、N)=inf{t≧0|X(t)=N、X(0)=i}、0〓i<N、によってT(i、N)を近似するのである。拡散近似はheavy traffic時にかなり有効であると予想される。またオーバーフローは主としてheavy traffic時に考慮されるべき現象であるから、系はheavy trafficの状態にあると仮定している。この仮定の下で、原点における境界条件として反射壁を持つ拡散過程を用いて、T(i、N)の分布及びそのモーメントを導出する。Q(t)は実d際には原点において零でないある有限の時間停まっているから、この滞在時間を考慮した補正を次に考える。特に、Nの値が小さい場合、もしくは到着がポアソン過程に従っている場合には、補正解が先に得られた解よりも、かなり正確であることが示される。以上の拡散近似解の精度を評価するために、GI/M/1系に対してfirst overflow timeの厳密解を同時に求めている。この厳密解と近似解を数値的に比較して、仮定したheavy trafficの状況では近似解は非常に正確であることが示される。
- 社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会の論文
著者
関連論文
- (0-1)変数計画問題に対するブール代数的解法 (情報理論・実験計画法における組合せ数学の諸問題 II : 研究会報告集)
- 待ち行列の拡散近似について (待行列理論とその応用)
- 拡散近似 : その考え力と有用性(待ち行列の現状)
- 劣化システムの最適観測・保全政策
- 微分動的計画法による非線形計画問題の解法
- 最大納期遅れを最小にする1機械処理順序問題に対する6種の近似解法の評価 : 準備時間のある場合
- 有限の待ち合い室を有するGI/G/1待ち行列システムに対する拡散近似 : II-定常状態における挙動
- 有限の待ち合い室を有するGI/G/I待ち行列システムに対する拡散近似 : I-ファーストオーバーフロー・タイム
- ある種の資源配分問題の解法について
- 最適教授項目決定問題の解法
- 区間信頼度を最大にする最適予防保全方策のまとめ
- ブロッキングを伴うある待ち行列網の安定条件について(待ち行列理論とその応用)
- 三進算術演算装置
- 0Rの旗を掲げよう(これからのOR) : 座談会
- 特集に当って(確率システム)
- 割引のあるセミ・マルコフ決定過程における非最適政策の除去法を併用するアルゴリズムについて
- 学会の法人化(「信頼性」Vol.30にあたり)
- OR発展への期待 : ORの先達からのメッセージ(OR : 21世紀に向けて)
- 機械故障を考慮したトランスファー・ラインの最適制御(待ち行列理論とその周辺)
- パケット交換システムにおける最適チャンネル割当政策(待ち行列理論とその周辺)
- 理論と実際のギャップ
- 中国訪問記
- アメリカン・コールオプションにおける権力行使時期の最適政策