牧草への施肥がアワヨトウの生存とクモの捕食に及ぼす影響

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牧草への化成肥料(三要素の成分量が同等)の施用がアワヨトウ幼虫の生存や発育および天敵の活動に及ぼす影響について知見を得るため,わが国の代表的寒地型牧草であるオーチャードグラスを用いて実験した。1) 牧草への化成肥料の施用量増加に伴い,牧草の粗蛋白質含量が高まり,アワヨトウの生存率は上昇し,発育の促進もみられた。2) 幼虫の頭幅と幼虫期間は,成分量で1kg/aと3kg/aを施肥した牧草で飼育した幼虫間では差がなく,終齢幼虫の齢期は6齢であったが,無施肥の牧草により飼育した幼虫は7齢まで経過した。3) 無施肥の牧草に放飼された幼虫は,施肥牧草に放飼された幼虫より分散する傾向が強かった。4) ハリゲコモリグモによるアワヨトウの捕食量は,施肥した牧草より,施肥しない牧草において多かった。5) 施肥量の違いによる牧草の質(粗蛋白質含量を指標とした)に基づくアワヨトウの発育や行動の変化が,クモの捕食量に及ぼす影響は明確でなかった。6) 草丈や草生密度の増大はクモの捕食量を減少させた。7) 以上のことから,牧草への施肥は,アワヨトウの餌としての牧草の栄養条件を良好にすることにより,直接的に発育促進と生存率増加をもたらすばかりでなく,天敵の活動に負の影響を与えることにより,アワヨトウ幼虫の生存率をさらに高めると結論された。
日本応用動物昆虫学会の論文
1987-08-25

牧草への施肥がアワヨトウの生存とクモの捕食に及ぼす影響

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