イネカラバエに対するイネの抵抗性に関する諸問題 : I.抵抗性品種の検定法についての一つの試み
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概要
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イネカラバエに対するイネの抵抗性については従来から多くの研究があり, またその検定法についても幾つか報告されている。このなかで最も普通に用いられているのは傷穗率による方法と傷葉率による方法の二つである。最近岡本(1955)はこれらの検定は苗代において若い苗を用いて行うべきであると主張しているが, この方法はイネの生育程度が各品種とも均一である点で優れている。岡本(1955)はさらにこの方法によった傷葉率は傷穂率と高い相関のあることを述べている。しかし逆に相関のない品種が幾つかあることもまた事実である。そこで, われわれはこの問題を孵化幼虫あるいはある程度生育した幼虫をイネに接種する方法(湯嶋・富沢, 1957)を用いて, 何が本当にイネの抵抗性を表示するものであるかを調べて見た。その結果, 傷葉の出現状况, 幼虫の死亡あるいは蛹の形成を時間的に追跡することによってつぎのようなことがわかった。1)傷穗率の多少は必ずしも抵抗性の強弱を示さない場合があり得る。2)抵抗性品種でも幼虫の食入率は感受性の品種と相異が見られない。3)抵抗性品種に食入した孵化幼虫は短期間のうちに死亡が起る。このことは2令の幼虫を接種した場合にも見られるが, 3令の幼虫を接種した場合には感受性品種との相異がほとんど見られない。したがって, 抵抗性品種のもっている要因は若令幼虫に対して強く働くものであろうと考えられる。4)傷葉率による方法はもしも蛹化がすみやかに行われたならば, 感受性であるにもかかわらず, 傷葉数の減少を引き起すことになってしまう。したがって岡本(1955)の方法は苗代イネを用いて, 時間-死亡率曲線を各品種について求めるというように改めるのがよいのではないかと提唱した。
- 日本応用動物昆虫学会の論文
- 1957-09-30
著者
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