ハダニ類の吐糸行動の解析 : III. 葉面における網の形成と微生息場所選好
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概要
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トドマツハダニOligonychus ununguis (JACOBI), ミカンハダニPanonychus citri (MCGREGOR)タケスゴモリハダニSchizotetranychus celarius (BANKS)およびナミハダニTetrauychus urticae KOCHの4種類に関して, 経時的な活動性の変化とそれに伴う葉内での生息場所の選好および吐糸によって形成される網と行動との関係を実験的に検討した。1.タケスゴモリハダニとナミハダニは新葉に入れると, まず活発な歩行(≒吐糸)行動を行ない, 一定時間経過後に摂食(休止を含む)へ移行する活動パターンを示し, トドマツノハダニもほぼ前2者に近いパターンであったが, ミカンハダニにはこのような導入初期とそれ以後との活動の変化は見られなかった。2.葉の凹部, 隆起部および平坦部位への選好性をみると, トドマツノハダニとタケスゴモリハダニが凹部に対する強い選好性を示したが, ミカンハダニとナミハダニは凹部と平坦部の双方を同等に利用することが分った。3.吐糸行動の結果, 生息葉面に糸が蓄積され網を形成するが, この網に対する4種の反応は様々であった。トドマツノハダニは主に網の下で生活し, タケスゴモリハダニでは全生活を網の下でのみ過ごすが, ナミハダニは網の上・中・下部のいずれでも歩行し, 摂食は主に網の下部で行なわれた。一方, ミカンハダニは網とほとんど無関係(網を作らない)な生活をすることが判明した。4.これら一連の結果から, 吐糸のもつ意味には斎藤(1977a)で示された「命綱」としての役割の他に, 生息面を改変する「構造物(網)の形成の材料としての糸」というもう1つの側面があり, トドマツノハダニとナミハダニはこの両側面を持ち, ミカンハダニは「命綱」のみ, タケスゴモリハダニは「構造物の材料」の面のみを持っていると考察された。
- 日本応用動物昆虫学会の論文
- 1979-05-25
著者
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