捕食性天敵とクロルフェナミジン剤の超低濃度散布によるハスモンヨトウの防除
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概要
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サトイモ畑の雑草を一部残したり,天敵のかくれ場所として「こも」を敷き込んでハスモンヨトウの捕食性天敵の密度を高め,夏季のハスモンヨトウ多発生時に忌避的作用を通してふ化幼虫集団を分散させ死亡に導く働きをもつクロルフェナミジン剤を超低濃度(30ppm)で散布してハスモンヨトウを有効に防除できるかどうかを検討した(モデル防除区)。対象区として慣行栽培圃場にメソミル剤を散布した区(慣行防除区)と無防除区を設けた。ハスモンヨトウ1令および4令幼虫密度はモデル防除区で最も低く,慣行防除区と無防除区は高かった。しかし6令幼虫密度は慣行防除区で老令幼虫の区外への逃亡が起こりモデル防除区とほぼ等しくなった。クロルフェナミジン剤は散布後7日間にわたって有効にハスモンヨトウふ化幼虫を分散させたが,2令以降の幼虫や天敵類には殆んど影響はみられなかった。メソミル剤はハスモンヨトウのすべての令の幼虫をほぼ100%死亡させたが天敵類にも大きな影響を与えた。また残効期間が短かく,散布後急速にハスモンヨトウの幼虫密度が回復した。捕食性天敵の密度は1, 2の例外を除いてモデル防除区で最も高く,続いて無防除区,慣行防除区の順であった。また殺虫剤散布の影響のない時期でのハスモンヨトウ幼虫の生存曲線を比較したところモデル防除区の生存率が最も低く,続いて慣行防除区,無防除区の順であった。しかし慣行防除区では老令幼虫の区外への逃亡が起こっているため後二者の順位はみかけ上のものである。次に捕食性天敵を四つのグループに分け,それらの密度と捕食されるハスモンヨトウ幼虫の令期の生存率の関係をみたところいずれの間にも負の相関が得られ,捕食性天敵がハスモンヨトウ幼虫の生存率を有効に下げる働きをしていることが示唆された。
- 日本応用動物昆虫学会の論文
- 1973-12-25
著者
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