高齢化社会における心身医学の役割とその発展(心身医学の役割と今後の展望)
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概要
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21世紀を数年先に控えて, 医学・医療は高度の専門性と分科性を歩むと同時に, 総合性と全人性に向けての歩みが求められている.また社会は都市化, 情報化, 国際化そして高齢化が進行し, かってないストレス社会が産出されつつある.心身の全体を医療の対象とする心身医学に期待されるところは大きい.ことに人生80年といわれる長寿社会にあって, 心身医学のもつ重要性については, すでに日野原1)あるいは筆者2)も総説を述べているが, この機会に改めて強調したい.ところで老年期は, 生涯にわたるステージに遭遇したライフイベントとその対応が集積した時期として捉えることができる3).高血圧, 脳血管障害, 心疾患, 糖尿病および肥満などの成人病が「生活習慣病」と呼称を変えて, その認識を新たにしていることも注目されよう.この場合, 個人のライフスタイルや環境が, それぞれ異なっていることから, 老年期は個人差の著しい心身の状態で迎えられることになる.また一口に老年期といっても, 現在の慣例によって65歳以上とされているが, 85歳以上の超高齢期を含めると20〜30年の長いライフステージを指すことになり, 決して単純に論ずることはできない.さらに生きていくことは, 老いることに他ならないし, 老いることは生きていくことと同義語であることを認識したい."老い"についての悲観的な考え方ではなく, 積極的に"老年"を捉える理念が提唱されていることにも注目したい.たとえば, ニューヨークのマウント・サイナイ医科大学のRoweおよびKahn^<4)>は, 女性高齢者に多い骨粗籟症が禁煙, カルシウムの適切な摂取, そして運動の習慣によって予防できることを一つの例としてあげている.要するに, 通常の老化(usualaging)に含まれている外的因子の修正によって, 成功した老化(successful aging)が達成できることを提唱している.脳の老化過程に伴って, 老年期には認知機能の低下が種々の段階をもって表現される.脳血管障害の予防を目的にしたライフスタイルの改善などによって, 年齢相応の21世紀を数年先に控えて, 医学・医療は高度の専門性と分科性を歩むと同時に, 総合性と全人性に向けての歩みが求められている.また社会は都市化, 情報化, 国際化そして高齢化が進行し, かつてないストレス社会が産出されつつある.心身の全体を医療の対象とする心身医学に期待されるところは大きい.ことに人生80年といわれる長寿社会にあって, 心身医学のもつ重要性については, すでに日野原^1)あるいは筆者^2)も総説を述べているが, この機会に改めて強調したい.ところで老年期は, 生涯にわたるステージに遭遇したライフイベントとその対応が集積した時期として捉えることができる^3).高血圧, 脳血管障害, 心疾患, 糖尿病および肥満などの成人病が「生活習慣病」と呼称を変えて, その認識を新たにしていることも注目されよう.この場合, 個人のライフスタイルや環境が, それぞれ異なっていることから, 老年期は個人差の著しい心身の状態で迎えられることになる.また一口に老年期といっても, 現在の慣例によって65歳以上とされているが, 85歳以上の超高齢期を含めると20〜30年の長いライフステージを指すことになり, 決して単純に論ずることはできない.さらに生きていくことは, 老いることに他ならないし, 老いることは生きていくことと同義語であることを認識したい."老い"についての悲観的な考え方ではなく, 積極的に"老年"を捉える理念が提唱されていることにも注目したい.たとえば, ニューヨークのマウント・サイナイ医科大学のRoweおよびKahn^4)は, 女性高齢者に多い骨粗鬆症が禁煙, カルシウムの適切な摂取, そして運動の習慣によって予防できることを一つの例としてあげている.要するに, 通常の老化(usualaging)に含まれている外的因子の修正によって, 成功した老化(successful aging)が達成できることを提唱している.脳の老化過程に伴って, 老年期には認知機能の低下が種々の段階をもって表現される.脳血管障害の予防を目的にしたライフスタイルの改善などによって, 年齢相応のusual agingより上位のsuccessful agingが期待される.以上, 老年期をめぐる重要な視点について触れたが, いうまでもなく老年期のQOLに最も大きな影響を与える老年期の健康障害について, その特徴を述べたい.
- 日本心身医学会の論文
- 1998-01-01
著者
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