貯穀害虫の種類構成の調査 : II.貯穀の種類と害虫の種類相
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概要
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(1) 近畿地方の7地域をえらび,1953年8月初旬より11月中旬,1955年5月の期間に農家,消費者家庭,製粉所,米穀配給所などを含めた210箇所より米,小麦,大麦,小麦粉,ヌカよりなる319のサンプルを採集し,貯穀の種類による害虫相の違いを調べた。(2) 害虫相の比較の基準として発見頻度指数(I)を次式により計算して用いた。I=問題とする種が発見されたサンプル数/全調査サンプル数×100この報告の各表とも発見頻度および括弧内に指数(I)を示した。(3) 種類相の特徴を示す指標としてS.P. ratioを用いた。S.P. ratioとは,2次性害虫の発見頻度の総計を1次性害虫の発見頻度の総計で割った値である。(4) S.P. ratioは鞘翅,鱗翅目ともに粉では穀粒の約3倍の値を示す(第1表)。種類では,コクゾウ,コナマダラメイガは両者共に多く,穀粒ではこれ以外にオオコクヌスト,ノシメコクガが高い頻度を示した(第2表)。(5) S.P. ratioは鞘翅,鱗翅目ともに米のほうが麦に比して高い。これは米では精白されたものが多く含まれた為と考えられる。第3, 4表で1956年7月の京都市内を中心とした調査にもとづいて,玄米と精白米との害虫相の違いを示した。S.P. ratioは後者では前者の2倍以上を示した。種類数でも,同様に後者ではより多くの2次性害虫が発見された。米麦ではともにコクゾウ,オオコクヌストが1, 2位の発見頻度を示した。米でコクヌストモドキ,ノコギリコクヌストの頻度が高いのは精白米が大部分を占めた為と思われる。鱗翅目ではノシメコクガは米で,バクガは麦で高い頻度を示した。(6) ヌカでは,コクヌストモドキ,コナマダラメイガが代表的な種類であった。(7) 本調査中に発見された昆虫の種類の目録をその食性とともに示した(第5表)。鱗翅目の同定不可能だっ1957年3月 桐谷:貯穀害虫の種類構成の調査II 13たもの,ダニを含めると更に上廻ると考えられる。(8) 全体として頻度の高い種類をその順に並べると,鞘翅目ではコクゾウ,オオコクヌスト,コメノケシキスイ,ヒメマルカツオブシムシ,コクヌストモドキ,ノコギリコクヌスト。鱗翅目では,コナマダラメイガ,コメノシマメイガ,ノシメコクガ,バクガ,イッテンコクガであった。(9) ナガシンクイは1回少数個体が発見されたのみで,近年米穀の貯蔵期が短くなってきたことによると思われる。(10) ヒラタコクヌストモドキ,Laetheticus oryzaeが見出されたが,特に前者は小麦粉の大害虫でわが国に定着しうる可能性がある。(11) コクヌストモドキは農村より都会地に多い。
- 日本応用動物昆虫学会の論文
- 1957-03-30
著者
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