顎関節症患者における噛みしめ負荷試験による安静時咬筋筋活動の治療前後での比較
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概要
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本研究の目的は顎関節症患者の噛みしめ負荷試験前後での安静時咬筋筋活動における筋電図学的変化を調べ, 顎関節症の治療前後, および健常者のそれと比較するることである.被験者は咬筋に筋症状を有する者のうち, 症状惻と習慣性咀嚼側(PCS)とが一致している顎関節症患者8名(以下, TMD群), および顎口腔系に異常を認めない正常咬合者8名(以下, 健常群)である.顎関節症患者の治療前後の咬筋の安静時筋活動を分析対象とし, 噛みしめ負荷試験前後の咬筋筋活動を多チャンネル筋電図計を用いて記録・分析し, 健常群と比較した.研究結果は以下の通りである.1.両側咬筋18部位のうち, 負荷試験前に比べ試験後に安静時筋活動が増加した者は健常群で4名, 9部位であった.TMD群の初診時では7名で18部位の全てに認められたのに対し, 症状改善時では4名, 7部位であった.両群での咬筋における左右差および部位による違いは認められなかった.2.安静時咬筋筋活動量の負荷試験前後の比較では, 健常群において負荷試験前5分時に比べPCSでは負荷試験後2分時から, 非習慣性咀嚼側(NPCS)では負荷試験後3分時から5%水準で有意な減少が認められた.TMD群の初診時では, 負荷市堅固5分時に比べ負荷試験後1分時にPCS, NPCSとも5%水準で有意な増加が認められ, その後は徐々に減少していたものの, 負荷試験後5分時においても負荷試験前のレベルまでは低下していなかった.TMD群の症状改善時では, 健常群と類似した経時変化を示していた.3.健常群とTMD群の初診時とでは負荷試験前の平均咬筋筋活動量に有意差はなかったが, 負荷試験後では健常群に比べTMD群の初診時の方が有意に高かった.健常群とTMD群の症状改善時とでは負荷試験前後とも有意差はなかった.4.TMD群の初診時と症状改善時との比較では, 負荷試験前のNPCSおよび負荷試験後のPCSとNPCSで症状改善時の平均咬筋筋活動量は有意に低かった.5.TMD群の噛みしめ負荷試験による安静時筋活動の亢進と筋症状の強さとの間には関連は認められなかった.以上より, 顎関節症患者では噛みしめ負荷を加えることによって安静時筋活動が亢進することが明らかとなった.さらに, 顎関節症患者の安静時筋活動量と症状側や習慣性咀嚼側との間に関連は少ないことが示唆された.
- 日本顎口腔機能学会の論文
- 1999-03-30
著者
-
今井 徹
北海道大学歯学部歯科矯正学講座
-
中村 進治
北海道大学歯学部歯科矯正学講座
-
山本 隆昭
北海道大学大学院歯学研究科口腔機能学講座歯科矯正学教室
-
中村 進治
北海道大学大学院歯学研究科口腔機能学講座
-
山本 隆昭
北海道大学病院歯科診療センター 咬合系歯科
-
井上 則子
新札幌アン矯正歯科クリニック
-
中村 進治
北海道大学
-
井上 典子
北海道大学歯学部歯科矯正学講座
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