天使達の時:愛の可能性
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
"アイリス・マードックの三つのゴシック小説の一つであり,10作目の作品であるThe Time of the Angelsはオックスフォード大学での彼女の古典学の師Eduard Fraenkelに捧げられている.ロンドンの霧に閉ざされ,廃墟の中に建つ館に住むCarel Fisherは神父でありながら信仰を失っている.彼はロンドンに転居して以来,その死に至るまで館から一歩も外に出ない.ロンドンという大都会にありながら,外部との接触を断った暮らしの中で,Carelは悪魔性を増し,その催眠作用で周りの人の意志を麻痺させ,自分の悪魔的欲望の餌食とする.メイドのPattieは,Carelに支配され,三位一体のイコンに象徴されるEugeneとのイノセントな生活を諦める.美しいElizabethは催眠術にかかったかのように,次第にCarelの魔力に支配されるようになる.Carelの娘MurielはCarelの魔力と必死で戦い,父から拒絶される.真実-CarelとElizabethとの肉体関係,ElizabethがCarelの実の娘であること-を知って衝撃を受けたMurielは,館の外の世界に触れて安堵感を得る.Carelがredemptive loveを期待したPattieが,自らの意志で呪縛から逃れ去った後,死を選んだ父Carelに対してredemptive loveを成就させたのはMurielだった.Carelの死後,父の罪-Elizabeth-を背負うMurielと難民キャンプでのイノセントな奉仕の生活に喜びを見い出すPattieに,愛の可能性を見る.娘と肉体関係を持つCarelにはオイディップスの要素が,父に対して強い愛を持つMurielにはエレクトラの要素が見られ,The Time of the Angelsはマードックが古典学の師に捧げるのにふさわしい作品である."
- 川崎医療福祉大学の論文
著者
関連論文
- 誇りが私を孤独にさせた : マーガレット・ローレンスの石造りの天使
- A Fairly Honourable Defeatにおける善と悪の相克
- 天使達の時:愛の可能性
- アイリス・マードックの The Green Knight における Bellamyの目覚め
- A. S. Byatt の Possession に描かれた学者像
- 「神の戯れ」のレイチェルの探究
- マーガレット・ローレンスの作品「火の住人達」の主人公ステーシーの成長を巡って