疫学部門
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
当部門は日本医科大学大学院学科目「生体機能制御学」を担当する教室である。平成10年度から, 神経内分泌学を中心とした生理学的研究を行う教室として出発したところである。生体の個体としての機能とその制御機構をホルモンを対象として研究を行う。この意味で, 当部門の大学院学科目名を生体機能制御学とした。1950年代に英国人Harrisによって提唱された視床下部ホルモン説は, 先駆者の例にもれず真実への道を避けて歩く大衆の批判の的になったが, 後日, Guillemin及びSchallyによる甲状腺刺激ホルモン分泌促進因子(TRH)の発見をもって正しいことが立証された。以降, 向下垂体性視床下部ホルモンが次々と単離同定され, 視床下部機能の多様性が具体的に調べられるようになった。つまり, 形態と電気現象に加えて物質からの検討が加わった結果である。一方, ホルモンの作用機序についても, ブラックボックスであった受容体以降の細胞内機構が徐々に解明されつつある。両者とも, 分子生物学の発展によって, 細胞レベルから分子レベルにステージを広げて研究が進められている。当研究室の研究対象の第一は視床下部機能の解明である。第二の研究対象は, 細胞の分化・増殖に関わるホルモンの作用機序の解明である。 I.視床下部機能の研究 1)主たる研究課題は, 下垂体ホルモンの分泌調節機構と作用機序についての研究である。下垂体ホルモンの分泌は視床下部ホルモンによる調節をうけ, さらに上位中枢からの影響下にある。また, ホルモン分泌には生物時計に裏打ちされた日内リズムに加えて超日リズムがあり, 生体の恒常性の維持に重要であると考えられる。ホルモン分泌における超日リズムの発現機構と意義については不明な点が多く, そのメカニズムの中枢については解明されていない。私たちは, この超日リズムの発現機構を解明することを目的として成長ホルモンについて研究を行い, 成長ホルモンの分泌リズムの形成には成長ホルモンの分泌を抑制する視床下部ホルモンであるソマトスタチンの間歇的な分泌が中心的役割を担っていることを明らかにしてきた。さらに, ソマトスタチンの分泌あるいはソマトスタチン細胞の活動に周期性を与えるメカニズムとして, アンドロゲンによる視床下部機能修飾作用が重要であり, 現在, このアンドロゲン感受性機構の解明に取り組んでいる。 2)一方で, 成長ホルモンが視床下部に作用して自己の分泌を制御する自己分泌調節機構(autofeedback)がある。私たちは成長ホルモンの作用部位を検討し, 視床下部のニューロペプチドY細胞とソマトスタチン細胞が標的細胞であるとの説を提唱した。引き続きこの課題について検討を進めている。リズム形成とフィードバック系が下垂体ホルモン分泌の中軸であり, この機構を解明し, かつこの機構に影響する因子を明らかにしてゆきたいと考える。 3)プロラクチンの分泌は視床下部からドパミンによって抑制的に調節されているが, 特異的分泌促進因子は発見されていなかった。最近, その候補物質としてプロラクチン分泌促進ペプチドが単離同定された。in situハイブリダイゼーションによってこのペプチドのメッセンジャーRNAは脳内の極めて限局された部位(主として脳幹部)にのみ存在していることを明らかにした。このことから, 向下垂体作用以外の生理作用を持つことが考えられ, 現在, このペプチドの生理的作用と特性を検討中である。 II.甲状腺乳頭癌の原因遺伝子の研究 1)甲状腺乳頭癌の原因遺伝子として神経細胞の分化および増殖に重要な働きをしているtrkAおよび, c-ret遺伝子のチロシンキナーセをコードする領域の5'側に他の遺伝子が融合してできた8種類の融合遺伝子が報告されているが, その作用機序は未だ明らかではない。また, 我が国においてこれらの融合遺伝子が検出される頻度は全甲状腺乳頭癌のうち約4分の1と比較的低く, 他の遺伝子異常が甲状腺乳頭癌の主な原因であると考えられている。我々は甲状腺乳頭癌において新規遺伝子ELKSがc-retのチロシンキナーセをコードする領域と融合していることを明らかにし, ELKS遺伝子およびその産物の特徴と甲状腺濾胞細胞の癌化の関連について研究を行ってきた。今後さらに研究を進めることによって, 我が国における甲状腺乳頭癌の遺伝子診断, あるいは治療に役立てればと考えている。
- 1999-03-25
著者
関連論文
- 疫学部門
- 疫学部門
- 疫学部門
- 疫学部門
- 疫学部門
- 疫学部門(研究概要:研究業績)
- 成長ホルモンは Blood brain barrier を越えて視床下部に直接作用し Negative autofeedback loop を形成する(平成 13 (2001) 年度公開セミナー(老研研究発表会)
- 脳内の成長ホルモン受容体遺伝子発現(平成 10 (1998) 年度研究発表会(平成 10 年 1 月-12 月))
- 成長ホルモンの分泌調節機構について(平成 10 (1998) 年度研究発表会(平成 10 年 1 月-12 月))