免疫部門
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概要
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当研究部門では, 現在, 以下の如き研究が行われている。1)花粉アレルギーないしはアレルギー性喘息発症におけるディーゼルエンジン排出ガス粒子(Diesel exhaust particulates, DEP)のアジュバント活性因子の同定とその作用機作を明らかにすべく, 主にマウスを用いて研究している。スギ花粉より抽出した粗抗原ないしは精製抗原(Cry j1)並びにハウスダストに含まれるDermatophagoides farinaeの主要抗原の一つであるDer f II(リコンビナントDer f II, rDer f II, アサヒビール奥村康氏より提供)を各々DEP, DEP中に含まれるpolycyclic aromatic hydrocarbons (PAHs)と共にマウス腹腔ないしは鼻腔に接種し, 経時的にマウス血清を採取して当該抗原に対するIgE抗体の産生をラットを用いたPCA反応で検討した。その結果, 投与ルートの如何に拘わらず, PAHs中のpyrene, anthracene, fluoranthene, benzo(a)pyreneにIgE抗体産生においてアジュバント活性のあることが明らかにされた。また, rDer f IIに対するIgG_1クラスの抗体産生に対して, ELISA法で検討したところ, これらorganic compoundsはIgG_1抗体産生においてもアジュバント活性を発揮することが明らかにされた。PAHsのアジュバント活性発揮における作用機構を検討する一環として, マウス腹腔マクロファージに対するPAHsの作用を検討したところ, 上記の各organic compoundはマクロファージに作用して, O^-_2,IL-1αを誘導することを, chemiluminescence responseとELISA法にて明らかにした。さらに, rDer f II抗原とDEPないしはpyreneが投与された免疫マウスの脾臓からのリンパ球をrDer f IIで刺激すると, その培養上清にIL-4が産生してくることが明らかにされた。なお, この産生, 誘導は抗原単独投与のマウスリンパ球では認められていない。IgE産生に関与するサイトカインであるIL-4が, これらPAHsにより誘導されたことは極めて興味がある。(J. Clin. Lab. Immunol., 48; 133 : 1996,J. Clin. Lab. Immunol. 48; 187 : 1996)。これらの成果はまた本年(1998年)IranのIsfahanで開催されるThe Fourth International Congress of Immunology and Allergyでの招待講演として報告される。現在, 私共はこれらPAHsのマウス鼻粘膜に対する直接的作用, 耳鼻科領域での手術の際に得られるヒト鼻粘膜由来マスト細胞に対する直接的作用についての免疫病理学的な研究が行われている。2)自己免疫病の発病機構に関する研究が, 主に慢性関節リウマチを中心に行なわれている。細菌菌体成分の一つであるペプチドグリカン(PG)をラットに投与することにより, 病理学的にヒトの慢性関節リウマチ(RA)に極めて類似した多発性関節炎モデルの作出に成功し, このラットからPG反応性T-細胞のell lineを樹立し, このT-細胞の性状が検討されている。また, これとは別に, RA患者由来の滑膜細胞, 変形性関節症(OA)患者由来の滑膜細胞を各々培養し, PGで刺激すると, その増殖態度に相違が認められ, その機構についての検討もなされている。3)グラム陽性球菌感染症の発病機構の検討 レンサ球菌感染後急性糸球体腎炎(PSAGN)患者から分離されたStreptococcus pyogenes (S. pyogenes)の産生するStreptokinase (Nephritis-strain associated SKase, NSA-SKase)とその他の患者から分離されるS. pyogenesのSKaseとは一次構造におけるアミノ酸配列が, そのcenter regionにおいて著しく異なることを明らかにした。実験動物に本抗原投与により腎炎が誘導される。しかし, このNSA-SKaseがヒトのPSAGNの発症に関与する抗原とし働くか否かはなお明らかでなく, PSAGN患者からの腎生検材料の上での本抗原の同定を必要とする。緑色レンサ球菌(Streptococcus mitis, S. mitis)の一部の菌株(Nm-65株)の代謝物質中にヒト血小板凝集因子の存在することを見い出し, 本凝集因子(S. mitis-derived human platelet aggregation factor, Nm-hPAF)の精製を試みると共に, 代謝物質の生化学的, 生物学的, 免疫学的性状について報告した(J. Med. Microbiol., 39; 352 : 1993,Infect. Immun., 61; 5252 : 1993,J. Med. Microbiol., 42; 91 : 1995,Infect. Immun., 63; 785 : 1995,J. Den. Res., 75; 929 : 1996,FEMS Immunol. Med. Microbiol., 17; 121 : 1997)。また, 精製されたNm-hPAFのN-末端アミノ酸配列を15残基まで決定し, これを基にCassette-PCR法を用いて, 全塩基配列が決定された。これらの結果は本年(1998年)4月FranceのVichyで開催されるGenetics of the Streptococci, Enterococci, and LactococciのASM Conferenceで発表される。Nm-hPAFによるPRPを用いた血小板凝集反応は全てのヒトのPRPで惹起されるわけではなく, この反応を阻害する因子を血漿中に持つヒトが存在することが明らかにされた。この阻害因子に対するmAbが作製され, その精製と定量化の検討が行われている。S. pyogenesないしはS. mitisと培養血管内皮細胞との相互作用あるいはヒト末梢血由来の単球に対する作用が, 主に転写因子(NF-κB)の活性化を中心に検討されている。
- 1998-03-25
著者
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