不死化ヒト肝星細胞モデルを用いたIFNγ及びrapamycinによる肝線維化抑制効果
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概要
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interferonγ(IFNγ)とrapamycin (Rapa)による抗肝線維化効果を検討するためヒト肝星細胞を不死化した培養細胞(TWNT-4細胞)を用いて基礎的検討をおこなった.TWNT-4細胞はヒト肝星細胞LI90細胞にhuman telomerase reverse transcriptase (hTERT)を導入することによって作成した.TWNT-4はplatelet derived growth factor βreceptor (PDGF-βR), α-smooth muscle actin (α-SMA), collagen type 1 (α1)を発現しており活性化肝星細胞の形態を呈する.肝星細胞を抑制する事が知られているIFNγを1000U/ml以上の濃度で24時間曝露してもcollagen type 1 (α1)の発現はほとんど低下しなかった.しかしながらIFNγを100U/mlの低濃度でも14日間曝露するとcollagen type1 (α1)の産生はRNA及び蛋白レベルで低下した.免疫抑制剤でもあるRapaも1-10ng/mlの範囲で用量依存的にcollagen type 1 (α1)の産生の抑制がみられた.さらにIFNγ10U/mlとRapa 0.1ng/mlの極めて低い濃度を併用して14日間曝露すると単独群で変わらずcollagen type 1 (α1)の抑制が認められた.すなわちIFNγとRapaの併用では各々の毒性を無視できる低濃度でもcollagen type 1 (α1)の抑制を認める事が明らかとなった.さらにIFNγとRapaは肝星細胞の活性化マーカーであるPDGF-βRとα-SMAを抑制する事,培養細胞上清中へのtransforming growth factor beta 1 (TGF-β1)分泌を抑える事を示した.アデノウイルスベクターを用いてTNF-related apoptosis inducing ligand (TRAIL)をTWNT-4細胞に形質導入することによりアポトーシスに陥らせることができた.これらの実験結果からIFNγとRapaは活性化肝星細胞に作用して肝線維化を抑制し,TRAILはアポトーシスの誘導をもたらす可能性が明らかとなった.今後これらの薬剤を用いて肝硬変における抗肝線維化治療への臨床応用が期待される.
- 川崎医科大学の論文
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