リブレットから見たオペラ《フィガロの結婚》の二重唱 : 「手紙の二重唱」を中心に
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概要
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本稿では、オペラ《フィガロの結婚》の第21番、いわゆる「手紙の二重唱」を取り上げ、オリジナル・リブレットにおける歌詞の様態、およびモーツァルトの作曲について考察を行う。「手紙の二重唱」では、伯爵を懲らしめる策略として、逢い引きの場所を知らせる手紙が書かれていくが、リブレットからは、台本作者ダ・ポンテが、単に伯爵夫人がスザンナに手紙の口述筆記をさせる情景としてこの部分を書いたに過ぎないことが読みとれる。しかし、モーツァルトは作曲に際して、書かれた手紙を2人で読み直すという、台本にはない情景を付加した。それにより,はじめは伯爵夫人に言われるままに手紙の筆記をする従属的な立場にいたスザンナが、二重唱を通じて伯爵夫人と対等な立場で策略に荷担するようになる様子が描かれるようになった。このような、状況の変化を盛り込んだ二重唱というのが、《フィガロの結婚》の音楽の大きな特質をなしているが、この曲に関しては、それはあくまでモーツァルトの作曲により実現されたのである。
著者
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