戦後石灰石鉱業史 : 業界紙『石灰石』を中心として
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概要
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わが国の鉱業史研究では戦前期の鉱業に研究の重点が置かれているため,戦後に法定鉱物となった石灰石を採掘する石灰石鉱業は鉱業史研究の対象とされてこなかった。しかし,石灰石はわが国で随一の埋蔵量を誇り,鉄鋼業やセメント業などわが国の高度経済成長を支えた産業で必要不可欠な鉱物であった。本論は,石灰石鉱業協会発行の『石灰石』誌を中心資料として,主に二つの検討を行う。本論の前半部では,石灰石の特性と用途を確認するとともに,戦前期からの石灰石鉱業の歴史を3期に分けて検討していく。戦前期に一定の拡大を見せた石灰石鉱業が,戦後の高度経済成長に伴ってわが国最大規模の鉱業へと成長していく過程が明らかにされる。また,その成長の背景としてグローリホール法から階段採掘法への採掘方法の移行が成功したことを指摘する。後半部では,石灰石鉱業の生産過程の分析を行い,石灰石鉱業の生産過程を整理するとともに,採掘方法の移行が成功した生産過程における要因を三つの鉱山の事例から検討する。この検討から,階段採掘法導入の隘路である積込過程の長距離化を克服する際に,既存技術であるグローリホール法の持つ積込過程の短縮,省略という技術的な特徴が階段採掘法に利用されたことによって採掘方法の移行が成功したことが明らかにされる。
- 慶應義塾大学の論文
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