沖縄県の精神障害者小規模作業所に関する研究(第1報) : Y町精神障害者小規模作業所:コストとケア必要度の変化
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概要
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近年、我が国の障害者基本法が改正され、精神障害者の「生活のしづらさ」が生活障害として認定された。従来の病院収容主義から社会参加への流れとなり、ノーマライゼーションは着実に進展している。精神障害者小規模作業所は障害者の社会参加を高める為の施策の1つであり、全国にその数は増えている。ノーマライゼーションの進展には地域の役割が大切であり、市町村への期待も大きい。しかし市町村の負担も拡大し、特に医療費や補助金等のコスト問題は深刻である。本研究の対象であるY町は、これまで精神障害者への地域活動としてデイケアや相談業務、家族会の支援を行ってきた。しかし、それに要した町の支出は僅かであり、その効果も十分に評価されていなかった。2001年に家族会による作業所が設立され、町より110万円の補助金を受けて活動を続けている。その作業所の経過を踏まえ、コストと利用者の変化を調査し、設立の効果を図る事を目的とした。研究方法対象者は、沖縄県Y町の作業所を利用する24人である。コストに関しては国民健康保険料の支出に注目し、作業所の設立の前後の比較を行った。利用者の変化に関しては、精神障害者ケアがいどらいん検討委員会版ケアアセスメント票の「ケア必要度」を用いて、障害の変化を振り返り調査にて分析した。自由記載の欄には、利用者の変化の概要を作業指導員に依頼し、その文章からカテゴリを抽出し作業所の役割を分析した。結果および結論1. Y町における「精神及び行動の障害」に要する診療費は高額であり、更に医療費が増加する事も予想された。その為の検討や対策が非常に大切であると示唆された。2. Y町は作業所の設立により、1年目で約260万円、2年目で約330万円の支出を削減し、医療費の抑制に効果を示していた。3. 「ケア必要度」の改善には個人差があり、一概に精神障害という同じ疾患でも個別性を踏まえる重要性が示唆された。4. 作業所の機能にリハビリテーションの効果があると示唆された。5. 作業所のリハビリテーション機能の効果として、病状安定とケアの必要性の軽減が挙げられ、その他に現状の能力を維持する効果もあると示唆された。6. 作業所の役割には就労の他、利用者が安心できる場所の提供であり、利用者にとって「憩いの場」であると示唆された。
著者
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伊礼 優
沖縄県立看護大学
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田場 真由美
沖縄県立看護大学
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伊礼 優
日本赤十字九州国際看護大学
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上門 亜希子
与那城町役場
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吉本 喜美江
与那城町役場
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神里 利枝子
与那城町役場
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山根 春美
与那城町役場
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下門 トキコ
与那城町役場
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長浜 初枝
与那城町あやはし作業所
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