近世都市の経済危機と人口 : 京都西陣の事例から
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
近世後期の京都・西陣の花車町では、天保クライシス期と幕末の開港期の2度にわたって急激な人口減少を経験した。この減少の要因を分析すると、2つの時期の間には大きな違いが認められる。天保クライシス期の人口減少は死亡率の上昇が原因であると考えられる。「難渋人」を書上げた史料に複数の病人が記載されていること、また女性が戸主を占める比率が急上昇していることは、いずれも病気の流行によって死亡率が高まっていたことを示唆している。一方、幕末の開港後に観察される人口減少は、借屋層を中心とする転出が原因であった。これらの世帯の転出先には「親類」「主人方」など縁故者が多く見出されるが、生糸価格の騰貴、下請仕事の激減という経済危機に際して、親類や仕事上のネットワークが緊急避難の手段として利用されたことを示す事実といえよう。
- 2003-12-16
著者
関連論文
- 山崎善弘著『近世後期の領主支配と地域社会 : 「百姓成立」と中間層』
- 近世京都の奉公人について : 長期趨勢と人口プロファイル
- 近世都市の経済危機と人口 : 京都西陣の事例から
- 『日本疾病史』データベース化の試み(経済学部創設100周年記念特輯)
- エモリー大学図書館と東アジア研究プログラム
- 幕末期京都の人口構造とライフコース
- 歴史から見た人口減少社会 (特集 「人口問題」再考)
- 近世京都における家屋敷の継承と親族ネットワーク--西九条境内志水町の事例
- Ts'ui-jung Liu,James Lee,David Sven Reher,Osamu Saito and Wang Feng (eds), Asian population history, Oxford:Oxford University Press, 2001, xii+451pp.
- 近世京都における人口移動と寺檀関係--寺替・宗旨替をめぐって
- 高等学校で「人口」はどのように教えられているのか--生徒200人のアンケート結果から
- 資料 社会科学史学会25周年記念大会出席報告
- 書評 Bettina Gramlich-Oka and Gregory Smits eds. Economic Thought in Early Modern Japan
- 渡辺理絵著, 『近世武家地の住民と屋敷管理』, 大阪大学出版会, 2008年1月, vii+217頁, 5,200円