調理によるそ菜類の物理的変化について
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概要
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1)そ菜類の煮熟による物理的変化を知るために,水道水,1%NaCl溶液,5%NaCl溶液を媒体として,煮熟実験を行つた。即ち新鮮そ菜類,乾燥そ菜類を試料として煮熟前後の容積重量を測定した。根菜類のやわらかさについては,ペネツロメーターを用いて測定した。2)ごほう,大根葉,ふだん草,ほうれん草,小松菜,水菜,はなやさい。,さやえんどうは,水道水を媒体とした煮熟によつて重量が10%内外増加した。3)葉菜類は煮熟によつて媒体の浸透圧による影響をうけたが,根菜類はあまりうけなかつた。4)水煮前新鮮そ菜類の比重は個々によつて非常な差があつたが,水煮によつてほとんどのものが「I」に接近した。しかも水分含有率82%附近を境として,それよりも水分含有率の大きいものは,水煮によつて比重は大となり,82%以下の水分含有率のものは煮熟によつて比重は小となつた。5)乾燥そ菜は煮熟前に,必然的に水浸漬を必要とした。水浸漬60分にして,容積重量は急増し,特に椎茸は水浸漬30分にして増加限度に達した。6)乾燥そ菜の比重は皆「I」以下であつたが,水浸漬により急増し,24時間後にはほとんど「I」に近い値となつた。24時間水浸漬後更に5分間水煮したが,比重の変化には,大差がなかつた。7)じやがいも,大根は,生の時,たてよこの方向における貫通深度にかなりの差があつたが,煮熟を続けるにしたがつてその差が少なくなつた。8)水道を媒体として煮熟した場合と,5%NaCl溶液を媒体として煮熟した場合の貫通深度は,煮熟しはじめて25分ぐらいまでは,水道水を媒体として煮熟した場合の方が大きかつた。なお同一試料において,一定の貫通深度に至るまでの時間は,5%NaCl溶液を媒体として煮熟した場合の方が時間を要した。9)食べるに適当なやわらかさの貫通深度は,各試料によつて異り,すべての試料に通ずる絶体的数値は得られなかつた。10)じやがいもの水煮中にNaClを添加し,5分後のやわらかさの変化を求めた。即ち水煮10分までにNaClを加えれば,モデルシステムとかわらず,貫通深度は増加したが,水煮15分以後にNaClを添加すれば貫通深度は増加しなかつた。水煮によつて,完全にやわらかくなつた20分以後にNaClを添加すれば,貫通深度は減小し,外観的収縮も目だつた(以上研究は末次先生の御指導のもとに行つた。ここに深謝致します。内容の一部分は第十回日本家政学会総会,第6回栄養改善学会にて発表した。)
- 中村学園大学の論文
- 1960-09-30