「遥拝隊長」論 : 形象化された戦争と〈運命〉の縮図
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概要
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物語作家としての力量に定評のある井伏鱒二にとっては、戦後の代表作の一つに挙げられる「遥拝隊長」という、第二次世界大戦を題材にした小説を、現代の客観的な視点から、精緻に読解・分析していくことで、この作品に込められた井伏の人生観や社会観の問題点を考察していった論文である。当時、偏狭な軍国主義に支配されていた日本が、国民一人一人の利益や幸福などをいっさい考慮することなく、勝手に起こしてしまった〈戦争)という圧倒的な暴力行為が持っている、愚かさや悲惨さ、そして、理不尽さといった非人道的な側面を、戦場で偶然に引き起こされた悲劇的な事故が原因になって、足が不自由になってしまうとともに精神に異常をきたしてしまった、主人公の"遥拝隊長"という浮名のついた熱烈な愛国主義者である岡崎悠一という一般庶民が、自分の生まれ故郷の笹山部落において、他の住民たちを巻き込んで繰り広げた様々な行動がもたらす喜劇的な事件やエビソードを、一つ一つじっくりと見ていきながら、作品全体を通して、それらに形象化されている〈運命〉というキーワードを抽出することで、現代の生活においても十分に通用する普遍的なテーマであることを確認したものである。
- 2001-06-30
著者
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