「出口なし」 : エウリピデス『メーデイア』における言葉の悲劇
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概要
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「子殺し」とそれをめぐるモノローグに焦点を絞らずにエウリピデスの『メーディア』のもつ一つの側面について一解釈を提出する。まず、(一)メーディアをとりまく男たちの造型のされ方として「父」として「子供」と「家」に関心が集約されていることを碓認する。つぎに、(二)メーディアの四^^、つ^^、の^^、殺人の特徴を検討し、(イ)「子供」を介して「父」と「家」に打撃を与えるという流儀のあること、(ロ)殺人の場所がはとんど例外なく家の「内」、「竃(ヘスティア)」の傍であることを示し、この劇は、家の「外」・男性・公的領域と家の「内」・女性・私的領域の対立が踏まえられていることを見る。さらに(三)で、その対立は、劇場の空間表象をも巧みに利用していること、そしてメーディアの語る言葉が(二)でみた二つの領域に対応する劇場の二つの場の相違に応じて変容を蒙ることをたどる。そして、(四)メーディアの自滅は、この劇での「言葉」の崩壊とより添っていること、すなわち、『メーディア』は「言葉」の崩壊をめぐる悲劇でも あるとの解釈を呈示する。
- 山梨英和大学の論文
- 1994-12-10
著者
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