「モネーン・エレーモン」 アンティゴネーの立っている場所
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概要
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ソポクレス『アンチィゴネー』について、アンティゴネー(A)にとっての「リアリティ」とイスメネー(I)およびクレオソ(K)のそれらとの関係という視点から、一解釈を提出する。(1)AとIの関係から、夫々に体現されている「死」と生という対立を、またAが「埋葬」およびピロス-エクトロス概念に負荷している異様な執著を読む。(2)AとKの関係(むしろ無関係)からは、Kには為政者と政治犯との対立と映るものが、実は、男性市民(の長)・家(オイコス)の長中心の価値の硬直した姿と、その価値の支配する世界に場所をもたない「リアリティ」との齟齬であると読む。(3)I、Kの属する世界との反照として片鱗を見せているAの世界は、AがA自身と直面する死の直前の場面での自己把握に更にその一端を垣間見せるとし、Aが自分が「メトイコス」となること、結婚できないことをラブダコス一族の呪い(とは神^^・々^^・の^^・真理の実現)の最後の成就と見ていること、I、Kが「価値」の不動性を信じているのに対し、Aが信じているのは人間の価値に無関係な「世界」の不動性であることを読む。(4)「幽閉」以後Aの登場しない舞台でもAの「世界」が現顕していることを確認する。
- 山梨英和大学の論文
- 1993-12-10
著者
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