金子不泣『波の上』覚書 : 初期『詩歌』同人の展開とその意義
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概要
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前田夕暮主宰の短歌雑誌『詩歌』は、その第一期(明治四十四年四月〜大正七年十月)において何人かの有力新人を輩出しているが、本稿ではその中の一人である金子不泣について考察した。金子不泣は郷里佐渡ヶ島の風土に根ざした孤独、寂寥の歌風を形成してゆく。その処女歌集『波の上』(大正五年二月、白日社出版部)は、すでに二十代半ばにしてかなりに完成された詠風を確立しており、今回はこの『波の上』の世界を考察の対象とした。「たはらぐみ」「島山」「落葉」「寝台」の四草からなる歌集の世界を、病気による帰郷から佐渡の風土への沈潜に至る作者の心理を追いつつ分析した。また、こうした金子不泣の歌風が、当時の西洋美術受容の歌壇の潮流や師である前田夕暮の作歌活動といかに関連するかを探究し、短歌史における『波の上』の位置づけを展望してまとめとした。
- 山梨英和大学の論文
- 1994-12-10
著者
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