情報管理による潅漑水管理
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概要
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潅漑システムの管理においては,システムの管理に関する情報が収集されているにもかかわらず,情報処理能力の不足あるいは処理システムの未整備のため,有効な活用が行われていない場合が多く見られる。情報を有効に処理し,統合的に管理するシステムが構築できれば,潅漑の水配分を含む多くの管理局面において有効な判断が下せるものと期待される。そこで,需要主導型の管理をおこない効率的な需要と供給のバランス調整を行うことを目的としてSIMIS(潅漑事業情報管理システム)を開発した。このSIMISを,アルゼンチン及びタイという大きく違う潅漑システムに適用し,その機能,実用性について検証を行うとともに,地域の特性に対応したシステムの改善・変更を行った。アルゼンチンにおいては,乾燥地域の多様な畑作物が栽培される潅漑システムに対するシステムの適用を行い,現在行われている供給主導型の水管理と,需要主導型の水管理を導入した場合の比較検討を行った。その中で,それぞれの管理手法による問題点,改善点を明らかにする事が出来た。タイでの適用にあたっては,水稲単作という条件下で,新たに水稲作での水管理(特にシロカキ期)のための計算オプションを追加し,SIMISに含まれる4つの潅漑スケジュール方法の有妨既について比較検討を行った。これにより畑作の場合,水供給の変動が直接的に作物の収量や水分ロスにつながるものの,水田単作の場合,水供給の変動の影響が畑作の場合ほど大きくないというとこが明らかになった。これは,水稲単作の場合,水田表面の湛水が供給の変動に対する調整機能を持っているため,供給の変動を吸収して安定化させる効果のあるためであると考えられる。SIMISを導入する事により,潅漑管理の改善のための各種の代替案について,実際に現地に適用することなく,水の供給必要量,潅漑ロス,水不足による収量への影響などについて比較検討する事が可能となった。また,各圃場毎の取水時間を明確に決定する事により水路上流部での過大な取水を防止し,平等な水配分を行う事が可能である。さらに,多くの潅漑スケジュールオプションを用意しており,多様な潅漑システムの管理に柔軟に対応可能である。潅漑システムの運用効率の改善ためには,こうしたシステムの導入は,第1段階にすぎない。管理責任者は管理するシステムの問題点・改善すべき点について十分理解しておく必要がある。さらに,システムの運用に必要な情報の収集・伝達システムの改善が必要であり,それを行う職員への訓練も重要である。
- 1997-03-15
著者
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